ミヤマキリシマ山行(5)夜行高速バス 1

横浜に出れば、あとはバスが博多まで連れて行ってくれる。野遊のように方向感覚並み以下の者には、ずいぶん便利な方法なのだ。

それに野遊はバスが好きで、日常で乗るオレンジバスでも乗車時間は楽しい。流れる窓の景色が楽しい。夜行は電車でも車でもどうせ眠れないタイプだから、バスがいい。閉めたカーテンの向こうに顔を入れて、ずっとガラス窓の外を眺めながら過ごす。味気ない高速道路だとしても、やはり土地土地の雰囲気があっておもしろいのだ。

たいてい2,3時間ごとにパーキングに寄るので、社内にトイレが設置されてあっても使用しないのでなくてもいい。登山するので日用品は持参しているから、お絞りやスリッパなどもいらない。座席が狭くても、背の高い男性には不自由だろうが、たいていの女性には充分なスペースだ。なのでできるだけ価格の安いバスで行こうと思った。けれど「エコノミー」という格安バスは、よほど乗客が多いと見込まれる週末だけしか出ていなくて、トイレ設置のバスとなった。その中で一番安い「スタンダード」というのを申し込んだ。

ただ窓側がいい。日が決まった時点で予約したのが1ヶ月以上前だったので、こういう場合はたいてい窓側になるので、のんびり構えていた。

そしたらなんと、乗ってみて驚いた。バスの端(窓側)、真ん中にも一列、と、3列並んだ中央座席だった。がっかり。

それであとで知ったことなのだが、エコノミーとかハイクラス(だったか?)とか名称がついているのは、バスのランクの相違ではなく、同じバスの中の座席のことだったようだ。それは路線やバス会社によっても違うのだが、横浜から九州は、この日、このバスしかなく、クラスを分けて何台も出すほどは乗客がいないのだろう。

乗客は40人くらいだったと思うが満席で、前席数席の座席は広く、これがハイクラスらしい。スタンダードという(10000円くらいだったかな、金額忘れたが)のは、こういうことだと知っていたなら、窓側のもう一つ上のランクの座席を予約したのにニャ。

40席ほどのバスは満席で、旅行の人、仕事の人などが利用するのだろう。昨年富山行きの夜行バスを利用した時は、登山客も多かったが、今回はいなかったようだ。

今はコンピューターで申し込むので、よくわからないことがあり、電話でも確認したけれど、こちらが知らないことなので聞かず向こうも言わずで、蓋をあけてみてあれれと思うことが増えた。

仕方ないから静かに目をつむって過ごした。