2014-11-01から1ヶ月間の記事一覧

シュレスの夏 27 甲斐駒(5)仙流荘で

野遊がもっと旅行や遊行が得意なタイプだったなら、街まで出ていって近場の名湯に案内して、その土地のお料理や地域の名産を楽しんだり、次の日は観光して帰途についただろう。でも野遊は不器用に、麓に2泊して明日は来た通りに帰る。仙流荘についたら、まず…

Sureshの夏 26 甲斐駒 (4)木の祠の幼鳥

双子山経由で北沢峠に下る。シュレスは野遊の後ろを歩く。突然シュレスが野遊を呼びとめた。「ERIKOサン!」と呼んだ。ふりむくと、木の洞を覗きこんでいる。ちょっとの距離だけどそこまで登り返すのが億劫で、うう〜んと思ったがシュレスが動かないので、よ…

シュレスの夏 25 甲斐駒(3) 白い頂上に立つ

2014年8月22日(金) 晴天の甲斐駒、初めてバス使用、北沢峠からの安易なピストン。でもやっぱりうれしい。林道を左に折れてしばらく登ると、なつかしい仙水峠。やがて、さすが甲斐駒。山の神様のオーラを浴びたようにシュレスは元気になった。 三点確保もま…

Sureshの夏 24 甲斐駒(2)靴騒動

初日はふもとに泊まるだけなので、ゆっくり出発する。玄関でシュレスは、持参してきた青いスニーカーを履いた。大分履いてきたスニーカーという感じだった。それでトレッキングシューズは置いて行こうとした。野遊はトレッキングシューズを履くように言った…

シュレスの夏 22 甲斐駒(1)

シュレスが帰国する数日前、ようやく山の天候に晴間が出た。行くつもりだった北アの朝日雪倉岳方面は全滅状態だったが、山梨に晴れ間が広がったのだ。急きょ予定変更して、富士山か南アルプスを狙うことにした。シュレスの今後の話の種に、標高日本一の富士…

Sureshの夏 21 前進

ある日、野遊の二番目の姉が我が家に来て、シュレスに日本語を教えた。これでシュレスの日本語の先生はゴスケ、野遊、姉と3人になる。教え方はそれぞれなのだが、英語の教師だったこの姉は、人にものを教えるのが好きで、シュレスがその気になれば、いくらで…

シュレスの夏 20 日本語の勉強

シュレスは、最初は日本語を習得できればいいと思っていたようだが、やってみたら、今までの言語よりも難しいと感じたらしく、途中で腰が砕けていた。シュレスの日常用語はライ語で、学校でネパール語を習得し、自由に操れるほどになっている。次が英語のよ…

シュレスの夏 19 朝日、雪倉岳

シュレスは野遊に電話を貸してと言うので子機を貸すと、夜、長電話をしている。話し終わって、野遊の部屋の親機のライトが消えると、またほかの誰かにかけていて、ずっとライトがついているのだが、最初のうちはシュレスも知らせたいところがいろいろあるの…

Sureshの夏 18 果物いっぱいの朝食

この夏は8月の上旬から大型の台風が接近して、ゆっくり進んでいたため、なかなか晴れなかった。ようやく太陽がのぞいた日が来てもすぐに曇って、夏山らしい登山日和がないままに過ぎていった。シュレスが帰りたいと言いだしたころから野遊は心痛のあまり具合…

シュレスの夏 17 光genji のDVDを観る

次の日、L氏に国際電話を入れたが、彼はたいてい忙しくて電話に出られない。留守電ではないのでメッセージは入れられない。何度かかけたのだけど話ができないまま1日が過ぎた。シュレスは「Call him?(電話した?)」と、たびたび催促してくるし、野遊、本当…

Sureshの夏 16 軟禁か

収入が得られないまま滞在するのはシュレスにとって、ただの無駄な期間と思えるらしい。「でも、いろんなものを見て行ってね、そして日本を内部から知れば、トレッキングで日本人のガイドをやったとき、ただ日本語を話せますというのとは違ってくると思うわ…

シュレスの夏 15 仕事がしたいと言う

シュレスが野遊に訴えた。家事ではなくて、何かバイトを紹介してほしいと。ここで普通に暮らす意義をシュレスは知らない。収入につながらなくては意味がないと思っているのだった。日本に来るとき、書類にサインしたはずなのに、読まなかったのかな。もし観…