2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

千の記憶(12)4歳まで

4歳までの記憶は、具体的には数えるほどしかないのか。 もっとありそうなものだ。後程思い出すなんてことはあるか? エリはこうだったと父母や姉たちから言われたことはほかにもあるが、自分の記憶としていえるのはごくわずかだ。 具体的なエピソードではな…

千の記憶(11)帽子2

母は麦わら帽子や、赤いベレー帽や、オレンジのネット帽などを出してきて、どれでも好きなものを選んでいいからかぶりなさいと言う。姉たちを待たせていると自覚のあるエリはついに妥協して、オレンジのネットの帽子を手に取った。それはふんにゃりしていて…

千の記憶(10)帽子 1

近くの海岸に、父が子どもたちを連れていく。そうだ父は子どもたちをとてもかわいがってくれた。 ピコがココの掌のビスケットに飛びついたのを叱った時も、あれは今後、赤ちゃんに飛びついてはいけない、これを許すと、ミルクの匂いが残る口元に噛みついたり…

千の記憶(9)桃色

エリは桃色が好きだった。家族はピンクという言葉を使わず、桃色と言っていた。 桃色、明るくてかわいくてきれいに思えた。家にある何でもエリは桃色を好んだので、母はエリに桃色のズロース(と言った。下着のパンツのこと)を買ってくれた。それは本当に桃…

千の記憶(8)最初の猫の記憶  ピコ3

ピコは父の攻撃が止んでも動けず、ぐったり横たわっていたが、やがてよろめきながら立ち上がり、表面は出血などしていなかったが体の力が抜けたように、ズズ~と縁側の方に移動していき、その下に入った。 母が見てはいけないと言うのでみんなで放置していた…

千の記憶(7)最初の猫の記憶 ピコ 2

妹のココがおむつを替えているとき、手にビスケットを持ったままだったことがある。ピコがその手に飛びついたそうだ。ココの手に噛みついたのでも爪を立てたのでもなく、小さな軽い身体でひょいと飛びついた。動く手にじゃれたのかもしれない。ビスケットを…