2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

大黒屋光大夫を辿る旅  32 徒労

この旅で、わたしたちが見学している間に、チャータしていた専用バスが、バス会社の予定外の事情により、ほかのことに使ってしまった。わたしたちのバスの中の荷物は、とりあえずほかの場所に移動させ、用事が済んだあと、また元通りに戻されてあった。けれ…

大黒屋光大夫を辿る旅  31 憧れの聖ゲオルギウス

エルミタージュ美術館「聖ゲオルギーの間」には歴代ロシア皇帝の玉座があり、そのうしろにはロマノフ家の紋章、双頭の鷲が飾られてある。 さて「聖ゲオルギウス」の絵画を見た。 それがこの部屋で見たのかどうか、あんまり一度に見学したので記憶に定かでは…

大黒屋光大夫を辿る旅 30 エルミタージュ美術館Ⅱ

このおびただしい芸術品の数々は、戦いにだけ身を費やしているのではないぞよというエカチェリーナ2世の意思表示ともいわれるが、それこそ財にまかせて、一級品も二級品も、めったやたらという言葉も当てはまるような収集が、世界の芸術品の偉大なる宝庫と…

大黒屋光大夫を辿る旅 29 エルミタージュ美術館Ⅰ

8月11日冬の宮殿には、エカチェリーナ2世が集めた美術品の数々がひしめいている。ルーフの上に黒々と林立する彫刻が、この国を「母なるロシア」と称え、その象徴たるエルミタージュ美術館を守っているかのようではないか。ロシア史のストーリーに足を踏…

大黒屋光大夫を辿る旅 28 ピョートル宮殿

予約してあるレストランで昼食をすませ、午後はペテルブルグの南西にあるピョートル宮殿を見学した。ピョートル宮殿の館内は撮影禁止だ。 宮殿の大きな窓から噴水の庭園を眺めると、噴水からそのまま川になって、まっすぐ伸びた先、はるか向こうは海だ。バル…

大黒屋光大夫を辿る旅 28 ソフィアの池

エカチェリーナ宮殿の庭を歩いて行くと、「ソフィアの池」がある。光大夫が、この池の前で、彼を慰めて歌を歌ってくれた女性と、親しくなったというエピソードがある。望郷の憂愁を癒されたソフィアの池。「ソフィアの歌」というのがあり、ロシアに古くから…

大黒屋光大夫を辿る旅 27 エカチェリーナ宮殿

帝政ロシア時代の首都サンクトペテルブルグの郊外にある夏の離宮、エカチェリーナ宮殿は、18世紀末、エカチェリーナ1世(1725年即位)によって建てられた。エリザヴェータ女帝(1741年即位)が、フランスのヴェルサイユ宮殿に魅了されて、ロココ調に改装し…

大黒屋光大夫を辿る旅 26 トイレ隊長

8月10日 見学でも食事でも、トイレをいつ済ますか、これが問題だ。清潔なトイレばかりではないし、数が少なかったりも。朝ホテルを出るときは、もちろん皆さんトイレを済ませて出発する。野遊は、自分はトイレで困ることはないだろうと思っていた。ところ…

大黒屋光大夫を辿る旅 25 白夜の語らい

ホテルに戻る。怪我をされたご婦人と、彼女の同室の友をねぎらいたくて、野遊はたまたまエレベーターで乗り合わせた数人の友に、ちょっとだけ彼女の部屋に寄りましょうかと提案した。みんな賛同してくださった。怪我婦人だけでなく、同室の友も心細いかなと…

大黒屋光大夫を辿る旅 24 バラの学校との交流

夕食はバスでレストランに出かけ、鈴鹿高校の校長と生徒2名と共に、サンクトペテルブルグのバラの学校の先生とタラソフ氏を迎えた。校歌が日本のフォークソング『バラが咲いた』で、彼らが入室してくるとき、我々は「バ〜ラが咲いたぁバ〜ラが咲いたぁ」と…

大黒屋光大夫を辿る旅 23 ネヴァ川クルーズ

ネヴァ川クルーズ、15時7分に出発。 ラドガ湖から発するロシア北西部のネヴァ川は、サンクトペテルブルグを通ってバルト海の支湾のフィンランド湾に流れる。74キロメートル。 川幅が広いので航行が可能なため、中世からバルト海沿岸と東洋との交易に利…

大黒屋光大夫を辿る旅 22 バスの乗車時間にふたりで遅刻

昼食時間には、団長、スタッフ2も合流し、午後は市街をまわってから15時にネバ川のクルーズがある。観光をしながら、バスの待つほうにゾロゾロ歩く。ハリスト復活大聖堂、通称「血の上の教会」は、見れど飽かぬ建物で、野遊は魅了された。ずっとこの教会…

大黒屋光大夫を辿る旅 21 ゆるみ

町のあちこちをバスでまわり、名所的なところでは短時間下車してはガイドのアリスの話を聞いてまた乗車。その乗車の際、参加者のあるご婦人がタラップを踏み外したのか、怪我をしてしまった。我々はバスに乗車してしばらく待った。バスは参加者の24人(今は…

大黒屋光大夫 20 サンクトペテルブルグ!

レッドアロー号を降りて8時、サンクトペテルブルグの駅に立つ。ここが、かの町かと、ちょっと感慨があった。駅でバスが待っていて、これから一緒にいるガイドのアリスが紹介される。ホテルに到着。ここでまた朝食だ。野遊は寝不足で、朝食会場には出発ギリギ…

大黒屋光大夫を辿る旅 19 赤い矢・レッドアロー号

8月8日の夜は、レッドアロー号に乗車する予定。その前の長々しい時間、わけのわからない奇妙な辺鄙なところで、いつになったら電車が来るのか乗れるのか、ずっと待たされた。もう野遊は、体がなまってしょうがない。よく皆さんおとなしく、どこかの柵のヘリ…

大黒屋光大夫を辿る旅 18 白夜

8月8日・夕方になっても明るい。夜になっても明るい。さんさんと照る太陽はなく、白々と残る太陽が地上をくまなく照らし出している。照らし出しているというか、浮きあがらせているといった感じだ。白夜。緯度が66,6度以上の地域はこの現象がある。「はく…

大黒屋光大夫を辿る旅 17 赤の広場

アロエフロート空港から空路モスクワへ。お昼はチャイコフスキーというレストランで、おいしく思えないものを食べ、ちっとも優雅でない洗面所に並んでトイレを済ませ、アルバート通り、クレムリン外観観光、グム百貨店とかいうところでショッピングタイムを…

大黒屋光大夫を辿る旅 16 ロシアの食事

8月8日 ホテルの朝食はバイキングで、10時出発に合わせて皆さんめいめい集まる。野遊はひとり部屋なので同室の人と連れ合うこともなく、出発準備を終えてから、出発1時間前くらいに朝食の会場に行く。 さて朝食の内容は、イルクーツクの五つ星ホテルだそうだ…

大黒屋光大夫を辿る旅 15 絆

国が変わって状況が変わったとて、そこにいる人たちは同じ人なのに、どうして、豊かに交わされていた交流までもが麻痺してしまうのか、人間個人個人の思いなんて、そんなに力のないものなのか、あるいはそんなにいい加減なものだったのか。いくら何を思って…

大黒屋光大夫を辿る旅 14 ロシアとダーク・ダックス

1992年12月、ソ連崩壊の日、ダーク・ダックスは、結成40周年記念イベントとして、アメリカ、ロシア、日本と股にかけたトライアングル・コンサートのまっただなか、ソ連にいた。 以下はゲタさんの言葉。『アヒル読本』より。「ある朝起きたら、違う国になって…

大黒屋光大夫を辿る旅 13 バイカル湖

生態学の宝庫、3000年前にできたという世界最古の古代湖、バイカル湖。 地球上の淡水の1/4を占めるという。透明度は最高、40m以上の深さまで見通せるそうだ。水深(1637m)も世界一。 塩水湖を入れればカスピ海が世界最大の面積だが、淡水湖では圧倒的にバ…

大黒屋光大夫を辿る旅 12 グンナイフウロウ

ダモイ・・・帰国。望郷の念。彼らの合い言葉はダモイ。雪の上に、土の上に、指で俳句を書いて同胞を励ました山本旗男のお墓はハバロフスクにあるという。 希望を捨てずにダモイ、ダモイ!の一念で過ごした彼は、九年目にしてシベリアの土となる。「ヤマモト…

大黒屋光大夫を辿る旅 11 ダモイ

光太夫を語るときシベリアは欠かせないが、歴史はその160年後、日本人とシベリアに、新たなる深い関わりを刻ませた。光太夫の場合は自然の力により、後者の場合はロシアの故意により。同一点は、いずれも日本人の意思はそこになく、彼らは10年という年月、「…