2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧

Sureshの夏 12 大事な宝物

夕食の後、洗い物を済ませてから、しばらくシュレスと日本語の勉強をした。ひらがなとカタカナの一覧表を、先にシュレスに郵送しておいたが、彼はちゃんとそれを持ってきていた。書き順ごとに色を変えてあいおえおからわおんまで野遊が手書きで作成したもの…

シュレスの夏 11 お箸に挑戦

夕食はゴスケはお刺身が好きでマグロの切り身をひとさく、先ほどお買いものしたときに買ってきている。野遊はシュレスが普段食べている延長線上のものを考えていた。いきなり違う国に来て食べ物もがらりと違ったら過ごしづらいのではないかと思ったのだ。 で…

Sureshの夏 10 初めて見る海

午前11時ころ藤沢に着く予定だったのが13時ころになったので、急いで帰ってもお昼を大きく過ぎていた。シュレスはお腹がすいたことだろう。帰ってすぐに食事ができるように、スパゲッティを下ごしらえしておいた。ガーリックとチーズの利いたカルボナーラよ…

シュレスの夏 9 再会

空港バスが入ってきた。止まった。運転手さんが降りてきて、下のボックスを開く。乗客が降りてきて、運転手さんからバッグを出してもらっている。その中にシュレスの後ろ姿はすぐに見つかった。名を呼ぶ前にシュレスがふり返って目が合った。野遊は走ってい…

Sureshの夏 8 もうすぐ会える

送付した書類の中に、色違いで大きく順番NO,を入れたメモ紙を同封しておいた。 1、日本に着いたら。(メモ1・カウンターのスタッフにこれを見せる。「藤沢行の高速バスの場所を教えてください」。なにかあったらここへと野遊のケータイNO,を添える) 2、バ…

シュレスの夏 7 3週間のホームステイ、日程が決まる

鎌倉の夏祭りや花火大会をシュレスに見せてあげたいと思っていた野遊だったが、7月は牛歩のごとくの進展で、いったいいつ彼が日本に来るのだろう、こんな進捗状況のままでは、夏が終わってしまうと心配だった。けれど実はお祭りや花火大会は、この滞在にお花…

Sureshの夏 6 行きたい時が行ける時

でも、この夏だけ日本観光体験ができたとしても、その後マレーシアに出稼ぎに行くシュレスを止めることはできないだろう。彼はいずれ、何年という年月の契約の元に国を出て働くつもりなのだ。ほかに何かいい方法はないのかって、ないのだろう。野遊に何かで…

シュレスの夏 5 送金

野遊は、L氏が「700ドルくらいでエアチケットが入手できることがあるので〜」と言ったのを聞いた後、Sureshに1000ドル(約10万円)送金していた。 これでエアチケット代をL氏に支払ってください、残金はあなたの費用に充ててくださいと。 それが920ドルだっ…

Sureshの夏 4 エアチケット

シュレスが日本に来て充分過ごして帰国するまでの宿泊、食事、旅行などをすべて野遊側が賄えば、これが一般的な常識のご招待に値すると思っていたが、だんだんそうではないことがわかっていった。シュレスは足賃を支払う気はないのだった。それは自分から日…

シュレスの夏 3 時々白紙に戻したい気持になった

日ネ親交協会の会長さんへのメール【この夏にホームステイする予定のSuresh(19歳)は、 L(実名伏せ)さんの助言のお陰さまで、ビザ取得の手続きを進めています。 でもネパリってのんきなのでしょうかね・・・ たとえば書類をそろえたりする手順が…

Sureshの夏 2 日本に来る?

シュレスのお姉さんは出稼ぎを続けていたが病を得て、帰国してからなくなってしまったそうだ。それが昨年のこと。シュレスは今度は自分がシンガポールに出稼ぎに行くことになった。下には弟と妹がいて、彼らの学校の費用も賄わなくてはならないとか。ネパー…

シュレスの夏 1 国際電話

初夏のある日。 どなたからでしょうか、国際電話なんて。電話の向こうの声は、静かな声だ。男性。 あなたは森木エリ子かと聞いている。(それがモリコエリコと言っていた) 自分はシュレス・ライだと名乗っている。もし野遊がそれでも反応しなかったなら、相…