2009-01-01から1年間の記事一覧

鎌倉駅前の交差点物語 (9)保留、実は却下?

障害を持つ@さんの発言から端を発し、実際にそこへ行って点検し、その意見を持って議会に臨んだ鎌倉市議会議員の千一は、その交差点の歩行時間を延長してほしいと提案したが、市からの即答は得られなかった。市としては、あれは神奈川県警の管轄化にあるの…

鎌倉駅前の交差点物語 (8)「千一は迷惑だ」

傍聴席はたいていがら空きで、その日も数人しかいなかった。千一の再質問の聞き取りシーンを傍聴席で眺めるたびに、わたしは、あることを思い出す。ある日、傍聴席で、千一の書き取りを眺めていたわたしは、横の席の男性に、「無駄な時間だ」と、言われたこ…

鎌倉駅前の交差点物語 (7)議会で質問する

議会当日、千一は自分の番が来るのをじっと待っている。まぶたは長くはあけていられないし、首も長くはもたげていられないから、最前列に座っていながら、目を閉じてうつむくので、まるで居眠りをしているように見える。後ろから見る彼の様子は、彼を知らな…

鎌倉駅前の交差点物語  (6)  質問文を作成する

千一の議会に提出する質問文は、話し言葉のようだ。平易で聞きやすい。でも、ちょっと文節が長くなると、文頭と文尾が一致していないことがある。それは、千一は、頭で書きたいことを思い描き、左足指で一文字ずつキーボードを打って、それを聞き取りながら…

鎌倉駅前の交差点物語  (5)電動車いすで渡ってみる

千一(無所属無党派・全くの個人としての市議会議員・一匹狼ならぬ一匹コヤギさん)のめざしていることは、鎌倉市の福祉行政についてだ。鎌倉市の中央図書館にエレベーターをつけて、車椅子でも利用できるようにしたり、江ノ電の駅をひとつ、ひとつとバリア…

鎌倉駅前の交差点物語 (4)三人でティータイム

@さんは千一に会った。 手持ちのペットボトルのお茶を喫しながら、わたしたちは語り合った。 千一の飲み物は、テーブルの上に、ヘルパーさんが置いていってくれた、3種類のマグカップに入った、水、お茶、ジュースなどだ。ストローがさしてある。これなら千…

鎌倉駅前の交差点物語 (3)留守宅に訪問

千一の家は鎌倉駅から、扇ガ谷(おうぎがやつ)方面に歩いて20分ほどの所で、わたしは彼の業務を手伝っているため、たびたび足を運んでいる。足の不自由な@さんを思って、鎌倉駅からタクシーで行った。14時。議会のない日だったので、わたしはアポを取らず…

鎌倉駅前の交差点物語 (2)千一に訴えてみたら

自分は、人の話を聞いて、ああそうかと思っても、実際には気遣っていなかったことを改めて思った。もし、自分に関係ないことでも、家族とか、自分の近しい存在の人の話だったらどうだろう。もっと親身になって聞いたと思う。あるいは、その人がわたしに訴え…

鎌倉駅前の交差点物語 (1)渡るのがコワイ

昨年の秋、友達の@さんから聞いたことから始まる。 「鎌倉駅前の交差点を渡るのがコワイ。それこそ命がけです」それは会話のやり取りの一部だったので、わたしは「大変ですね」と言ったくらいだった。(と思う)@さんは足を引いている。数年前、脳溢血を患…

野遊・呼吸の世界 24 エヴェレスト、微妙な想い

(30)際限なき夢想・・・終章呼吸シリーズ、24回となった。この(30)の小見出しを記したところで、終章としよう。個人感想とはいえ、ずいぶん荒削りに書いてしまったようで、隙だらけの文章だったかも。どうかご海容願います。わたしは最初の項1の…

野遊・呼吸の世界 23  雲散霧消

(29)遭難には、きっと原因があるなんということだろう。アナトリ・ブクレーエフは、『Deth Zone』を出版してすぐ、亡くなってしまった。アンナプルナで雪崩に巻かれて。・・・山に行く人っていうのは、やっぱり山に行くのだな。入山料を支払うと、向こう…

呼吸の世界 22 遭難事件後のバーサス

(お知らせ・前回の『呼吸の世界22』の後尾にあるコメントボックスに、コメントが入っています) (28)2冊の本ジョンの『INTO THE THIN AIR』出版後、アナトリが出版した『DETH ZONE』は、文筆家のG.ウェストンデウォルトが著述、アナトリの言葉などを…

野遊・呼吸の世界  21  ジョン・クラカワーの偏見 

(26)ジョンは、もっと慎重に書くべきだったアメリカ人のジョンも、西洋人より東洋人が劣っていると思い込んでいる人種で、その東洋人の中でも世界的活躍の目立つ日本人はどうも好かん、という感情があるようだ。いわゆる偏見だ。ロブ隊の顧客8人の内、…

呼吸の世界 20  ジョン・クラカワーの書いた遭難記事

(24)ジョンにも難点を感じるジョンはジャーナリストとして、帰国して早速勤め先の機関紙に、事のあらましを掲載した。できるだけ正確をきたし、ベースキャンプでキャッチしている情報を確認し、生還者たちに事情を聞き、自分の記憶をたどった。事故直後…

野遊・呼吸の世界  19 エヴェレスト最大の遭難事件

(23)蟻のように頂上にこの事件は、エヴェレスト登山史上最大と言われた。二つの大手の登山ガイド社、アドベンチャー・コンサルタンツと、マウンテン・マッドネスの隊長が2名ともなくなり、ガイド1名(アンディ)、顧客2名(ダグ、康子)、シェルパ数…

野遊・呼吸の世界 18  頂上直下の惨劇

(22)ロブ、あなたは遭難したのか殉死したのか殉死という表現をした本もある。あのような合理的な生き方をしていたロブ・ホールが、じゅじゅじゅ殉死なんてあり得ない。でも結果的にはそういう表現も可能だ。ロブのトランシーバーは、通信後もスイッチが…

野遊・呼吸の世界 17  ロブ・ホールの不可解な判断

(21)引き返す時間ロブは1990年代前半あたりでは超一流の商売登山者だったようで、この時期の登山実話の、とことどころに登場している。いつだって頼もしげに登場している。 危うい顧客を手取り足取り、顧客のハーネスにロープを結んで、それを彼の体…

野遊・呼吸の世界 15  『生きながら残されて』

(18)サウスコルで置き去りにされた2名自社の顧客3人をテントに連れ戻したアナトリは、もうテントを出なかった。ロブ隊の顧客、「アメリカ人男性と日本女性」(という程度の認識だった。なにせほかの隊なので)を残してきたことを承知していたが、ほか…

野遊・呼吸の世界 16 表面に氷が張っていた難波康子

(20)難波康子2≪難波康子1は「呼吸の世界7」に記述してあります≫置き去られて逝った難波康子。(難波康子については、ひとつ前のNO,15も、お読みいただけましたら)このアタック日、手間がかかったのはベック、康子、ダグだろう。ベックは先ほど書いた。…

野遊・呼吸の世界 14 隊長スコットの遭難

(17)8400M バルコニー下スコット隊はすごい。顧客9人、全員登頂させた。顧客たちもすごい。でも疑問が残る。しんがりを務めて登っていた隊長スコットは、全員が頂上に立ったと知らせを受けた時点で、どうして下山を開始しなかったのだろう。スコットも…

野遊・呼吸の世界 13 吹雪の中の彷徨

呼吸の世界、極寒のAbout 8000M 無酸素ビバークアタックテントまであと1、2時間のサウス・コルで、あちこち真っ暗な中をさまよっていた人たちが、幸か不幸か合流する。名前を書いてもカタカナの羅列でわかりにくいだろうから省くが、スコット隊のガイド、…

野遊・呼吸の世界 12  登山ラッシュ

(14)ベック・ウェザース話を午後過ぎに戻す。天気はよかった。5月10日、頂上に向かって、30人以上の登山者がひしめいていた。1本のロープに群がる登山者たち。凍え、体力を消耗してこれを待つ後続登山者たち。食パンみたいに固まって道をあけない…

野遊・呼吸の世界 11 スコット・フィッシャー

(13)隊長スコットの密かな苦悩マウンテン・マッドネスという登山ガイド社の社長スコット・フィッシャー。彼は長髪を束ねて後ろで結んだ、面魂精悍な優秀なる登山家だ。その実力をビジネスに運用した彼は合理的な、いかにもアメリカ人的な人物だったのだ…

野遊・呼吸の世界 10  酸素

(12)ジョンの勘違い・・・アンディを見まちがえるこの日、最初に頂上を踏んだのはアナトリ(スコット隊のガイド、なんと顧客も連れずに単身で)、ジョン(ロブ隊の顧客)、アンディ(ロブ隊のガイド、トップで行った自分の隊の顧客に付き添って)だ。彼…

野遊・呼吸の世界 9   アタック日

(11)ロープのセッティングのいざこざこの時期は、頂上アタックは夜中に出発するやり方が多くなっていた。エヴェレストが初登頂され、以降、ヒマラヤ8000M峰14座(とされている)の初登頂を国々が競った。日本が登ったのはマナスルゥだ。ゴザインタ…

野遊・呼吸の世界 8 隊長の苦労

(10)イレギュラーロブは、5月10日を頂上アタック日に決めていた。同時期にBC入りしたほかの登山隊と、打ち合わせをする必要があった。アタック日が集中すると危険だからだ。アメリカのマウンテン・マッドネスという会社の社長、スコットフィッシャー…

野遊・呼吸の世界 6  シェルパ、ポーター

(8)ヒマラヤ街道ネパールのカトマンドゥ、さらにルクラまで入ると、そこにはわたしたち日本人には想像できない未開発な文化生活がある。ヤクーの糞を炊いて暖房にするのだが、建物の中にニオイが立ち込めるそうだ。子供が大人を手伝って、ヤクーの糞を集…

野遊・呼吸の世界 7 ベースキャンプ 

(9)難波康子 1難波康子は、世界7大陸最高峰踏破を目指した。ガイド社に申し込む登山が多かったので、余計なことには煩わされなかったと思うが、自分のみを管理して登って降りてくるだけでも並大抵のことではなく、この世の「山に魅せられちゃった人」の…

野遊・呼吸の世界 5  信頼関係、ロブとアンディ

(7)高度順応 行っては戻り、期間をかけてアドベンチャー・コンサルタンツの8人の顧客の平均年齢が高かった。(ちなみに難波康子は47歳)。大名登山みたいな感じで登っていたのだろうと思う。8人は現地で初顔合わせ。これから長い期間寝食を共にして同…

野遊・呼吸の世界 4  エヴェレストガイド登山・・・営業登山社

(6)アドベンチャー・コンサルタンツ10年ひと昔というならば、1996年はひと昔を越える。 ニュージーランド人、ロブ・ホープは、アドベンチャー・コンサルタンツを設立し、エベレスト登山者を募った。世界で一番高額なガイド料だった。(6万5000…