ミヤマキリシマ山行(11)夜の煩悶、朝の躊躇

眠りたい眠れない。昨日もバス泊で寝ていない。隣のMとSは寝息を立てている。強い人はすぐに眠れるのだろう。22時、消灯時間になっても非常灯がピカピカしていて、アイマスクをしたがどうも目がさえ。23時、雨が激しく降っている。24時、向かいの男性3人が(多分女性の連れが個室で、そこで飲んだりおしゃべりしていたのだろう)戻ってきて、ばたばたと布団を敷きだした。最初から布団を敷いておいて、戻ってきたらそうっと布団に入ればいいのに。MとSも、さすがに目がさめた様子。1時。も〜新規巻きなおしで温泉に入った。ああ2時か。そのあとは眠りに落ちた。ああよかった。

4時に目がさめた。一睡でもできるとホッとするのだ。もうひと眠りと思ったが、そろそろ早い人たちが起きだしたので、野遊も起きて温泉に。外は叩きつけるような雨。温泉のガラス戸越しに真っ白で何も見えない外を見て、旅行気分になる。

6時から朝食だが、MとSはのんびりしている。Mは布団から身を起こして目を閉じ、眠れなかったなぁという顔をしている。Sは「野遊さんが頭の向きを変えたのは気がつかなかったけど(そのときあたりは眠れていたんだね)」と言い、つまりあまり眠れなかったという気持のようだった。

野遊はトイレに立ったりお風呂に行ったり、ザックを開いたりしていたけど、そうっとだったので幸い起こさなかったようだ。彼らは寝入りばなは実によく寝ていた。で、野遊が寝ついた2時過ぎあたりからは眠れなかったのかもしれない。申し訳ない気がする。。同じ時間帯に眠れれば困らないけど、団体で眠るというのは本当に大変なことですね。

6時過ぎに食堂へ。窓の外を見て、Sが「何度もここに来ているけど、こんな雨の中を歩くのは初めてだな」と言う。えっ、歩く気!?まさかでしょ。

「あのぉ、わたしは停滞気分なんですけど。こんな遠くに来ただけで満足なので」
「そうですね」と肯定してくれるS。
「うんうん、ま、平治岳だけにしましょうかね」とM。
どちらもそんなこと言いながら出発準備をしているので、やっぱり行くのだなと、野遊はあわてて温泉の脱衣所に行き、着替えた。パッキングも遅れを取りそうで急ぐ。

玄関でも必死でテキパキ。そしたら追いつき、さて出発と立ち上がったら、Mは悠然と靴紐を結んでいて、そのあとケータイで話をはじめた。

野遊はこのころようやく二人の特徴のようなものがわかってきた。Mは泰然自若としていて、Sは気遣いが細かい。共通点は、せかせかしていない。これは野遊の関東感覚かもしれない。関東人は、よほどおっとりしているタイプの人でも、MとSに比べればせかせかしている。

雨でも行くぞと決めてきた登山者は、もう出発しているようだが、それはわずかだ。団体客は躊躇しているようだ。

我々も出発。8時半。雨は少し勢いを弱め、霧雨になっていた。