ミヤマキリシマ山行(21)久住分れの晴天、蝿だらけの主峰久住山

これがかの「久住分れ」か。この地名に惹かれていた。
標識の前の石に腰かけ、歩きだしてからはじめてザックを下ろした。
ふう。ここから赤川温泉山荘に一気に下るつもり。
本当か?空は晴れてきて、ガスの合間に浮きあがったのは、紛れもない久住山
自問自答の間も持たず、野遊はザックを背負い、立ちあがり、赤川方面(牧の戸方面扇が鼻)とは反対の方向に足を踏み出していた。11時半。幸い時間はある。

昨日と今朝からの荒天によってか、登山客は少ない。上方に人の気配はあるが、だれとも出会わない。出発が遅かったから久住山だけだ、ともかく進もう、ゆっくり、ゆっくり、前に足を出しているだけでいいのだと。

分岐点に着くと、久住山から降りてくる登山者に出会った。そちらに向かってまた登った。そこらあたりから、人の気配が多くなってきた。人とすれ違う。上にも人気が感じられる。頂上に着いた。

ガスは始終動いていて、景色が見えたり隠れたり。暑さ寒さもちょうどいい。そして野遊は立った。九重連山主峰、久住山に!野遊にとって、馴染みのない見知らぬ土地のサミットにたどり着く一瞬は、何かを突破した緊張と興奮の最高潮でもある。これが久住山か、これが久住山だ!

久住山の頂上は大船山よりも広く、ここで開山式を行う年は場所にゆとりがあると言ったSの言葉を思い出していた。そして来年はここで行われるであろう開山式の様子を目に描いてみたりしたものだ。
ここには登山者がいっぱいいて、お昼時なのでお弁当を開いてにぎわっていた。久住山の標識を写真に撮りたくても、人がいてなかなか撮れなかった。

気になるものがあった。蠅だ。多勢さんの蠅が、ワンワン飛んでいて、顔に触るほどだ。手で追い払いながら、もう戻ろうと、そそくさと下山した。下山してすぐに、蠅はいなくなった。