ミヤマキリシマ山行(22)九重連山最高峰、中岳を「久住王山」と命名

青空が広がって、気持のいい「梅雨の晴れ間」となった。分岐点に戻る手前の小高い丘に寄り道して昼食とする。12時。この丘から久住分れに一筋、きれいな道がついているが、だれもいない。下るか?いや・・・

中岳に行きたい。急いで行こう。荷物を置いて中岳に向かった。天狗ガ城は遠くから見ると北アの白馬みたいに片方がとんがっていて、鋭く美しい。近づいていくと、その先端だけをもぎ取って丸めたようで、また違った顔に見えてくる。右を巻いてしばらく行くと下りになる。

乾いた丸い池の跡を右下に見おろしながら、岩場をなおも進むと、大きな池に出た。音もなくゆっくり波が打ち寄せる姿はちょっと恐ろしげだった。上に小屋がある。「池の小屋」だ。

そこから緩やかに岩場を登って行くと、上方に人が立っている姿が見えた、まっすぐこちらを向いている。ほっとして足を速め、ずんずん近づいて行ったが、その人は動かない。いよいよ近づくと、それは岩だった。通り過ぎ、振り返って見ると、それはすでに、どう見ても岩だった。

中岳の頂上についた。静かだ。

景色は無音の映像のように広がって、周囲の山々、今来た道、隣尾根へと続く道などが、はっきりときれいに見渡せた。

星生山は晴れ間もガスかと疑うような真っ白な煙を上げ続けている。あの煙は北千里浜からも圧倒的な威力を以って見あげられた。

目を転じると久住山の頂上に人々の姿が見える。蠅が飛んでいるんだろうなと思う。ここには虫は飛んでいなかった。

しばし立っていると、野遊はこの山に不思議な気品を感じた。

なんなの中岳って名称。

野遊はひとり、儀式を行った。

「中岳よ、あなたさまを野遊は『久住王山』とお呼びします」