朝日連峰縦走(26)小寺へ、そして大井沢へ

小寺への道も、ほかより容易というだけで結構長かった。野遊には指導標か目印がもう少しほしかった。いつまでも黙々と下山路が続き、最盛期なのに登山者に会わない。
1時間ほど下ると、タキタロウ組のひとりが休んでいた。一緒に下りだすと、ほかの人たちに追いつこうとモウレツに走り出すではないですか。
こんなに走れるなら、最初からちゃんと歩けばいいのにね(^.^)

やがて全員そろってドカドカ走り降りていった。それは、実は彼らのタキタロウさんが、竜の小屋からじかに日暮れ沢に向かって下っているそうで、そこで待っているから、急いでいるのだった。小寺でお風呂に入って、次の日送ろうと昨夜言っていたが、彼を迎えに行くので、そんな時間がないようだった。

「小朝日はどうだった?」と走りながら聞くので、
「景色もよく、すてきでした」と走りながら答えると、
「ふうん、でもちっともうらやましくないもんね」と言い、爆笑。
「あのう、車、本当にいいのですか」と走りながら聞くと、
「まさか本当に乗るとは思わなかったんでね」
ギャァ〜・・・(>_<)い、今さらそんなこと!
走っていても彼らは爆笑を連発している。

13:00、小寺鉱泉に着き、野遊はここで泊まりたい気分。
バス便はないが、竜の小屋の遠藤氏が、「だれかと組んでタクシーを呼べばいい」「だれもいなかったら小寺の人に車を出してもらったら」などと言っていたが、はっきりわからないことを当てにするのは不安で、選択肢に入れていなかった。でも彼らはあたり前みたいに野遊を連れて駐車場に行き、車に乗せてくれた。林道を日暮れ沢まで走るのだ。

お昼も食べずに駆け下りたので、車中でアルファ米の袋に水を入れて(◎o◎)食べている人もいた。友達が一人、直行コースを降りて待っていると、こうして急ぐものなのだな。きっと、太ったタキタロウさんはもうくたびれて降りることになって、ほかの4人はさすがにそこまではつき合えず、朝日方面を経由して降りたのだろう。

日暮れ沢への林道をどんどん走り登って行くと、対向車がやってきた。以東岳往復夫婦だった。小寺の道を日暮れ沢に下山したのだ。この下山コースは小寺に下りるより長い。車使用のやり方の中でも高度な健脚夫婦だ。すれ違いざま挨拶して別れた。

日暮れ沢に到着。避難小屋から嬉しそうにタキタロウさんが出てきた。ずっとひとりで待っていたらしい。竜門からの下山路は急降下だったそうだ。その道を、かの若夫婦は登山路に使い、ツアー客もしばしば使用するようだ。急だけど稜線へは短いコースでもある。(そして野遊も、思いがけず次の年に、この道を登ることと相成った)

ワゴン車発進。ハチが車内を飛び、だれかが窓を開けるのだが、追い出したはずなのにまた飛んでいる。そのたびにワイワイ騒ぎ、だれかが「あ、トランクが開けっぱなしだ!」と。車を止めてトランクを閉めた。ハチは窓から出て後ろから入り、グルグル回っていたらしい。そこでまた爆笑。着いたのは大井沢というところだった。