朝日連峰縦走(29)山形の街で遭難!?

高速を降りると車内アナウンスが、改まった調子で、大変お待たせしましたと言い、ご乗車ありがとうございますと言い、お忘れ物のないようにとか、長々しゃべっているので、終点かと思った。

少年も運転手さんに「気をつけて行けよ」と言われて下車したので、野遊も降りてしまった。「山形ですか」「はい」「料金は」「2500円です」という短いやり取りがあっただけ。それが山形県庁前だったのだ。知らないとはこういうことだ。

野遊は乗車の際、運転手さんに「山形駅」と言っているのに、彼は野遊が降りるとき「ここは駅ではないですよ」と言ってくれなかった。細かく言えば野遊も「山形の駅ですか」「終点ですか」と聞けばよかったのだ。抜かりなく気を張っていればこういうことはなかったのだが、どこが抜かりかもわからない状態の中にある。
予防線として、乗車前に確認したのに。第一野遊のカッコウを見て判断できないのか、気の利かない運転手め。
降りてから大きな建物(県庁)のほうに道路を横切り、あれ、駅じゃないと思い、上を見ると山形駅の道路標識があるので歩いて行った。駅よりちょっと手前にバスの終点があるのかと思った。ところが全然駅が見えてこない。

17:00。下山してから4時間たっている。強い西日が真っ向から照らす。紫外線よけのサングラスをして歩いた。今日はもう終わりと思った汗がタラタラ流れる。
人が少ない。自転車に乗った人を呼び止めて、「山形の駅はどこですか?」と聞くと、
「この道をまっすぐ行ったところです」と答える。やっぱりいいのか。
西日に向かって歩く、歩く。ヘンだな〜まだ現れてこない。

このとき、野遊はとんでもない間違いを犯していたのだ。駅で下車したのだから、「あとどれくらいですか」などと聞く気もなかったので、場所を探しながら歩いてしまった。ところが、駅はまだずっと先だったのだ。山形県庁から駅まで、7キロ以上あったのではないか。最初からその気で歩けばともかく、こういう場合の行動は疲労する。
どうなってるの、なんでないの山形駅と思いつつ歩いた。
大きな建物がいくつも続いた。鎌倉市民の野遊には、たいていの街は広く思える。広いロータリーもありベンチなどあるが、ここで座ったらドッと疲れが、と思い、ゆっくりでも前に進んだ。登山か?

人通りが出てきて、また人に聞いたが「あっちです」と前を示すだけ。だからあっちねと歩くけどない。疲弊した。運転手といい、山形の人は「もう一言が足りない人種」かもしれない。

道路沿いに交番があったので寄った。聞くと、この先まっすぐ、あと3キロほど行くと言われた。唖然。ザック姿の野遊を見て、「ちょうどいいひと汗の距離ですよ」と。
「県庁で降りても終点で降りても料金は同じだし、もったいなかったね」と言われた。
パトカー巡回しないの、それに乗せてと言いそうになった。

出ようとしたら電話が鳴り、待ってと言われて待ったが電話がなかなか終わらない。野遊はついに、そばの椅子に座ってしまった・・・
電話が終わってから、オマワリドンは山形市街地図を渡してくれた。
水を所望したかったが、野遊は心では図々しいのだが、言えなかった。
何とか立ちあがり歩いていった。でも五里霧中で歩いているよりはストレスがなくなった。それにしても、1時間も歩いたってのに3キロ〜あと3キロ〜(*_*;

野遊は下山すると、靴を脱いで草履に掃きかえるのだが、今回は手に持ちたくなかったし、それにともかくバスを降りればフィニッシュと思っていたので、靴を履いていた。急な下り道を数時間駆け下ったあと、こんなに長くアスファルトを歩くのはきつかった。
渇きに汗も出なくなる。右手にコンビニが出てきたのでマケマシタ・・・とペットボトルのお茶を購入、飲もうとしたがゴクゴク飲めなかった。
点滴みたいに少しずつ飲み飲みして歩いた。ほとんど遭難状態だ。