朝日連峰縦走(31)歩いた・・・深い喜悦!

朝は4:00ころ目覚めた。下界にいるのだなぁとしみじみ思った。体が重い、足が痛い、顔がむくんでいる。下山日の予定外の行動も、朝になって考えれば、バスの運転手さんも交番のオマワリドンも関係なく、すべて自分に帰するものであった。
まわりの助言に惑わされた野遊の失敗だ。

もう一度ゆっくりお風呂に浸かり、着替えてパッキングした。靴は、小さくなったザックにギリギリ詰め込めた。帰途に使用する可能性のあるものは手提げバックに入れた。今日は素足に畳ゾウリだ。電車で足元が寒くなったときのために、指つきソックスも出しておく。

サービスで朝食があるホテルなので、6:00、ロビーに下りて行った。ロビー続きの食堂は、小規模ながらバイキングで、野遊はコーンフレイクにたっぷり牛乳をかけてザクザク食す。野菜サラダを小皿に盛ってお代わりして食べた。それからコーヒーを紙コップに入れて部屋に持ち帰り、ゆっくり喫して歯を磨き、出発した。

歩きだすと体のだるさも足の痛みも感じなくなっていた。気分も爽快だ。山形駅は昨夜の顔と違って、さわやかなきれいな駅だった。

新幹線が動き出す。野遊は地図を眺めていた。昨日オマワリドンからもらった市街地図。こういうのが手元にあったら便利だな、持っていようと思った。山形県の地図も、ホテルや駅にあり、こういうのは地元でこそ手に入るもので、出かける前にほしかったな、と思った。地元の観光課から資料を送っていただくこともできるが、今回は、ガイドブックと朝日連峰地図があったので、わかったつもりでやってきた。でも、ふもとと周囲のつながりが把握できなくて不自由だった。

山の地図も広げた。コピーして持ち歩いたそれは、折り目がボロボロになっていた。自分が書いた行程に、時間の書き込みがある。小屋に到着してから思い出して記入したものだ。昨日のはまだなので思い出しながら書き込んだ。

ふと目をあげると、車窓から遠く山々が見えた。そのとき、野遊は「終わった」と実感した。野遊の縦走は終わったのだ。

歩いた、歩ききった。朝日連峰を北から南へ。ガスに巻かれ、風に叩かれ、絶景が展開された。寒かった、暑かった。長かった、広かった。この足で一歩一歩、たしかに朝日の稜線を野遊は歩いたのだ。しんとした深い喜悦が全身にせりあがってきて、ゆくりなくも野遊は目頭が熱くなった。

次ぎのラスト編(no.32)に、コース・タイム記載。