安達太良連峰(5)主峰へ

道は次第に火山の様相を呈してきて、ザキザキの溶岩がドデカンドデカンと立っている。足元は裸のような土で、いかにも強風に洗われてしまっているといった感じだ。

朝日連峰も風がすさまじく、野遊も何度か岩に叩きつけられたが、竜の小屋の遠藤氏が、「風が強い日は、そんなものじゃない」と言っていた。東北の山の特徴かしら。

北アで特に風の強いのは、黒岳、三俣蓮華岳黒部五郎岳あたりだそうで、小屋(水晶小屋)ごと吹っ飛ばされたことがあるとか。それより強いのかしら。

中アも強いと聞く。宝剣岳で、岩と岩の間にしがみついて、風の合間にソレッと次ぎの岩に走っては隠れ、そこでまた期を見計らって次の隠れ場所に走り渡った思い出があるが、あれは風速20メートルくらいかな。その場所で、野遊の山岳部の先輩(大きい男性)が、ピッケル一本を地面につないだまま浮きあがったことがあるそうで、それは風速30メートルくらいだろうか。

小屋が吹き飛ばされるのは風速40メートルくらいかな。安達太良連峰の強風はどのくらいなんだろう。(加藤保男さんが吹っ飛ばされたエヴェレストのジェットストリームは、もちろん規模が違います。植村直己さんが引っぺがされたのであろうマッキンリーの狂風も、日本国内山岳規模ではありませぬ)

今日は風はそれほどでもなく、ガスも動いて恵まれているほうだ。ガスはたれ込めるような感じや、淀んでいる感じや、流れている感じなどいろいろあるが、今回は少し遠くに張っているといった感じだ。先ほどより視界がはっきりしてきてはいるが、相変わらず遠くの景色は見えない。

主峰に近づくに連れてガスが薄らぎ、周囲の異国な景観に心ときめかせながら歩く。馬の背主稜から右手に沼の平の噴気口を見おろすことができた。次第に人気が増えてきた。さあいよいよ主峰へ!