安達太良連峰(6)乳首にて 2

実は前章(5)の索引事項以外の情景がある。
あんまり登るツアーの顧客らがのろいので、降りる人たちが業を煮やして、(それもほかのガイド社のガイドが主張したことから)、ちょっと中断で、たまってしまった下りの登山者に道をあけることとなった。
個人登山者は情けないような顔をしながら、彼らに混じって降りてきたが、ツアー顧客の、なんと厚顔なことよ。これは山に対して無知なるがゆえであろうから、顧客たちには、野遊、文句はないが、ガイド社には文句がある。
ガイド社はもっと登山のなんたるかを知るべきだ。ガイドをちゃんと教育すべきだ。ガイドは一期一会の顧客であっても、先にきっちり「べきこと」を、にわか教育すべきだ。
野遊が、その狭い通路?で待っているとき、おツアーさんの顧客が、片手のストックをもてあまし、(だからストックなんか持たなければいいんだ!)もうどうにも動けなくて、そこは困っているのを見過ごす登山者はいない。ので、ストックを持ってあげた。
次々と、何の法則か、皆さん、もうほんのすぐそこが降りる地点なのに、その地点で、両手を使わないと降りられず、前の人に習って、すぐ下で待っている野遊にストックを渡した。野遊はそのたびに持ってあげた。
そしたら何人めかの顧客(男性)が、地面すれすれでドドッと体制を崩し、な、なんと野遊に体当たりしてきたのだ。
狭い場所で、いきなり野遊の胸板めがけてドドッ。どこにも体を確保する場所はなく、野遊は、そのまま谷川に転倒する状態だった。隣のゴスケが(これも無防備で)(無防備以外の立ち方はない場所で)咄嗟にこけながら野遊の体を支え、引き戻してくれたから、野遊は命拾いした。
ところが、野遊になだれかかって(これまた)命拾いしたツアーのおっさんは、何がなんだかわからない状態で、ストックを取り直し、無言でヨロヨロと下って行ったのだ。そばにいたガイドも見ていたはずなのに、何も言わない。
ゴスケは蒼い顔して「よ・・・よかったねぇ〜・・・」と言っていたが、数秒1歩の差で、野遊と、あのおっさん、そのまま死んじゃってたんだよ!
(実はゴスケには、野遊は過去に、もう1度、命を助けてもらったことがあるんだけど。雪渓でね。ま、これは長くなるから省く。でもその逆もあり、こういうのはおたがいさまで。助かったからケロンと言えることで)ほんとコワイ。
ツアーガイド社、もっと切磋琢磨すべきことがあるんじゃないですか!?
はっきり言って、ツアー、現在の状況では迷惑なんですよ。
ツアー。あなた方が山を乱しているんですよ。