朝日連峰、この秋 2 「神よ宇宙よ力をください」

山じいからの計画は、10月21日(金)に、日暮れ沢から狐穴までの縦走。ここに野遊の歩きたかった、三方境から直角に伸びている天狗への分岐の道が含まれてある。あまり歩かれていないため、道がフカフカだと聞いたが、見渡せばきれいな道だ。ここは通るかわからない。野遊が元気なら歩けるが、そのまま狐穴に行く道もある、こちらは昨年野遊が歩いた道だ。

次の日10月22日(土)は、狐穴から天狗に下り、午後は、山じいは地元山岳会主催の冬山登山道の整備に加わるそうだ。23日(日)は、焼ヶ峰、バカ平経由で下山。

この地元山岳会は西川山岳会というのだが、こういう方々が朝日を守り、この連峰の無垢を保っているのだろう。地元大井沢で生まれ育った山じいは、その仲間なのだった。多分、仲間は広い範囲で多勢いて、臨機応変、随時みんなで活動しているのだろう。朝日連峰とは、まことに人々の気持に支えられた、幸せな山ではないか。

野遊は思った。「このコースは自分にはムリだ」と。日暮れ沢からの登りも下りも、道が急過ぎて野遊は敬遠していた。もう1日かけて、朝日鉱泉から鳥原山経由、あるいは小寺鉱泉から小寺山経由で大朝日、そこで1泊して竜門へ向かう縦走路しか考えていなかった。

それが、山じいは日暮れ沢から登るという。しかも必死で登って竜門小屋に1泊のはずが、さらに足を伸ばして一気に狐穴まで行くという。さりげなく当然のような計画を送ってきた。野遊には相当必死の1日半コースだった。

野遊が冷静な人間なら、お断りしたかもしれない。でも野遊はあんまり冷静になれない。行ける。とは思わなかったが、行きたい。と思った。行きたい。行きたい・・・行きたい!熱に浮かされたように「行きます!」と山じいに返事してしまった野遊に、神よ宇宙よ、力をください。