朝日連峰 この秋 12 「狐穴小屋」

三方境。「さんぽうさかい」という。(野遊は「みかたさかい」とか「みかたがはら(・・?」とか言ってしまう)
ここから狐穴小屋へは、昨年歩いた道ではなくて、天狗の方面に伸びている尾根から行きたくて、山じいに言ったら、ガスが流れてきたり晴れたりしている中を、山じいが「それならこっち」と、その道に入って行ったが、野遊は自分で捜さないで山じいに言うんだなあと思った。野遊はすっかり主体性を放り投げて山じいにすがっていたようなものだ。

人が歩かない道というにしてはとてもきれいな道で楽しい。風に吹き飛ばされるのか、砂礫と大岩以外に何もない。狐穴小屋に着いたのは15時40分だったと思う。チラとその前に時間を見ただけで、小屋に着いたら記すのを忘れてしまった。

こんないい時期にだれもいない。まさかと思った。本当に入山者数の少ない山なのだな〜。水場で顔を洗ってタオルをゆすいだ。冷たくて絞るとき息を詰めた。

狐穴小屋は、右横にバイオトイレの畑が配置されてある。竜の小屋と天狗の小屋は、玄関の真正面だ。狐穴小屋は設置スペースがきついから、こういう配置になったのかもしれないが、畑の位置は横のほうがずっといい。正面だと、景観もよくないし出入り口での行動が不自由だ。だから狐穴小屋は「いい小屋」だ。

管理人室が二階にある。どうしてだろう。狭いということかな。でも1階のほうが何かと便利ではないだろうか。なんて、余計なお世話ですね^_^;。 
2階の風穴スペースが、すのこが敷かれてあって優しげだった。床が、出入り口のところだけステンレスみたいで、冷たいからだろう。重いドアーにはロックがついているのだが、テープで巻かれてあった。そして張り紙。「カギをかけんな!」と書いてある。登山者が出かけるとき、戸締りしてしまったことがあったのだろう。冬、もし雪が積もったら、二階から入る登山者が困るからだろう。小屋番の安達さんには、昨夏寒江山ですれ違っただけだが、お顔が浮かぶような気がした。

管理人が不在のときは、管理人室はもちろん締め切りだが、このスペースには、フライパン、トイレットペーパー(だと思う、ビニール袋に入っているのが見えた)、それといくつかの入れ物に水類が入っていた。入れ物からして、多分アルコール類ではないかと思う。管理人室に入れないで、ここに置いてあるのは、「もし困ったら、飲んでもいいですよ」という意味ではないだろうか。それは、だれもが「そうですか」と、飲むわけではない。でも寒いときにやっとたどり着いて、このアルコールで助かる人もいるかもしれない。それとも登山客の私有物かな。まあだれも無暗に手をつけたりしないだろう。安達番人の狐穴小屋は「いい小屋」だ。屋根が赤いのもかわいい。

山じいは焼肉パーティをした。コンロに網をつけて、ちゃんとナマの肉を焼いた。キャンプの余裕。冷えたビールじゃなくて凍ったビールを持ってきて、あれ〜溶けてない〜と、火で炙った^^;。ペットボトルにお酒も持ってきて、明日の分もあるそうで、す、すごいですね・・・野遊のザックは水を1,5ℓ入れて8キロ弱。なんだか登山道整備にと、重そうな武器も背負っていて、山じいのザックの重量は想像したくない(-_-;)

野遊は楽しくて、それになんといっても、あんなに気にしていた日暮れ沢の登山道を予定通り登れたうれしさでいっぱいで、もうたっくさん食べたり飲んだりおしゃべりしたりして、すっかりいい気分になって寝てしまった。でも寝入りばなは寒かった。棚に毛布があり、それを下ろして上にかけた。

最初小屋について見たときは、ばっちい毛布だな、使いたくないと思ったものだが、価値観はどんどん変わり、ありがたく使用させていただいた。夜中には体が温かくなって、毛布をどけた。