朝日連峰 この秋 18 「きのこ」

山を愛す西川の山岳会の方々、この山岳会は、山形県の西川町(にしかわまち)にある西川山岳会という。西川町は月山と寒河江、葉山と大井沢を結んだちょうど真ん中に当たるところの町だ。出羽三山朝日連峰の間にある町だ。

仲間が集う「芋煮会」とは素朴な名前だ。重い根菜類を背負うのも、摘んできたキノコをお鍋に入れるのも、各々持参のアルコール、だれかが差し入れに持ってくるものとか、自力持参のもので宴会をする。

野遊は昔日の山岳部を思い出す。高齢の先輩方がお目付けで、中心は二十代の若人の集いだった。彼らの活動は意欲的で、登山への知識も技術もマナーも高く、野遊はそこで基礎を学んだ。そのころ野遊はアルコールは飲めなかったけれど、男性がたは「気付け薬」と称して荷物に挿入していた。(寝る前に気付けしてどうするんだろ^_^;)テントの中で歌った山の歌は数しれない。1970,80年代の日本の、世界に於ける登山風景を思えば、こういった優れた山岳部が各地で活躍したのも当然だろう。

時代は移り、山岳会の内容も変わってきた。人生の酸いも甘いも乗り越えてきた方々が求める登山。高齢の方々のほうが意欲的なのかもしれない。あの時代の思い出とは色合いが違うが、大人がたの、なごやかな西川山岳会の雰囲気に、野遊はしばし感慨にふけった。


野遊は二つ石山を越えてしばらくして、白いキノコを見たけれど、名前もわからなかった。毒キノコもあるのに、彼らはよく見分けられるものだと思う。野遊は山じいとか、山岳会にご馳走していただきっぱなしで、どれも山での粗末な食事と違って、優雅だった。下山してからは昼食は大井沢のお蕎麦屋さん(山荘)で、お蕎麦もおいしく、山菜とキノコが多種類あリ、コクがあって香りも高い。野遊には珍しかった。

ゼンマイなどはみずみずしい緑色で、シャキシャキしていて、ゼンマイとは本当はこういうものなのかと知った。

帰りは獲れたてのナメコをたくさん買った。日本にはキノコや山菜がいっぱいあるはずなのに、どうして野遊はこういうおいしいものを日常で手に入れることができないのだろうか。輸入品ばかりで、すっかりしおれていて、香りなどない。あんなに無造作な感じの大きいナメコは初めてだった。大井沢はおいしいものがあるなぁ〜と感心した。


野遊にトレーニングの指導をしてくださった、体育館のトレーナーのお姉さんにも、キノコをお土産に持って行った。「お蔭様で東北の山に登れました」と、お礼を述べた。
「これ以上強くなれないけど、体力を落とさないように、これからも定期的にここに来てトレーニングを続けよう」と、密かに誓った。密かにね。


これで『朝日連峰 この秋』の山行メモは終わりです。
でも、このあとも続けます。
この山行を機に、朝日連峰を色々な方角から眺めてみました。