朝日連峰 この秋 21 「人為的施術」

10月23日(日)、天狗から大井沢へと野遊が歩いた道は、前日整備された道で、泥グチヤになるところは木がたくさん敷かれ、水路も作られてあった。この時期に整備すると、その上に雪が積もって、道が締まるそうだ。
稜線上では、網が張られてあり、そこから植物が芽を吹けば、砂防に成功とか。その網は1枚15キロするそうで、半分、または4分の1に切って背負ったり、強い人は1枚のまま背負う。有志の方々が背負って登るそうだ。

山は年月と共に古くなっていき、崩れていく。朝日は風が強いので、ネットや袋詰めされたものが定着しない場合もあるとか。毎年それを確認して記録しているようだ。雪が積もって、春、溶けながら下にずり落ちていくとき、土や石も削り取っていく。また、登山道の位置にも問題があるそうだ。それらで傷ついた道を施術するように、網を張り土嚢を置く。山にとってはいかにもわずかなツギ当てかもしれないが、実際にその部分は次の年に回復の兆しを見せたりするようだ。人間が山に施す行為が、山にとってどのくらい効を奏していくかは、長い年月のうちに答えが出るのだろうか。

それらの行為をする方々の年齢層だが、全体的に高いようだ。もっと若人たちが参加して、中高年者がたがそれを指示するという体勢になれば、継承されていくのだが、と思った。元締めがどこか、詳しいことは野遊は知らないが、「朝日連峰保全協議会」という組織があって、そのさらに元締めが環境省になるのかどうかは知らないが、行動は、いくつかある山岳会の方々や個人で参加する有志など。ガリー侵食部への土留め作業、緑化ネットの設置、登山道上部から雨水の排水路整備などだそうだ。


山が崩れていくについては、どこの山も無残で、北アなどちょっと雨が降るとたちまちあふれて水登山。土の下が飽和状態になっているという。それはダムをたくさん造ったことにもよるし、登山者たちにより、すでにオーバーユースになっているからだ。

でも登山者が多ければ地元の業者方は儲かるので、小屋もあれこれ工夫してみたり、登山しやすいように交通機関も工夫したり、バスを走らせロープウェイをつけ、いらっしゃいいらっしゃいと宣伝する。
それは県政、市政として必要なことでもあるので、一概にいいとかよくないとか言えない。

野遊の住む鎌倉だって、市議会議員たちは観光地であることに期待を寄せている部分がある。鎌倉の辺鄙な地域の下水道完備よりも、中心観光街のユニバーサルデザインを優先している。お土産売り場の方はいいかもしれないが、観光客方の街を荒らすことといったら、シーズン中はゴミだらけだし、混雑して時間どおりに動けない。野遊が子供のころは、休日は危険だからと、ひとりで外出するのを禁じられていたほどだ。野遊は我が街について「世界遺産を目指せなんて言わないでくれ〜」と、うめいている。ここが難しいところなのだろう。

朝日連峰にはロープウェイがどこにもない。バスも夏しか入らない。営業小屋もない。だれもいらっしゃいいらっしゃいと呼ばわらない。それにしても、テント全面禁止とは思い切ったことだと思う。いつからそうなったのだろう。70,80年代はどうだったのだろう。野遊の先輩方は幕営縦走だったが。どこの機関がそれを決定するのだろう。

それからバイオトイレはすばらしいが、これで全面解決ではない。夏場だけというのが気になる。この秋、野遊が行ったときは、すでにバイオトイレは使用できず、1基あるボットントイレだった。あれは汚物どうするのだろう。

[閑話休題]
男性は行動中に「雉撃ち」を行なうことあり、そういうことをあまり気遣わなくていいような仕組みになっているので、昔、山岳部で行った当時も、みんなで歩きながら、男性は時々寄り道していた。そこでいつも思うのだが、なんで彼らは山側に雉を撃つのだろうか。つづら折とか、危うい場所でない限り、谷側に向かうべきではないだろうか。日常の習慣が為せる業か。これは「登り優先」などの謳い文句と同様、「登山白書」にでも入れてほしいものだ。


〜次回の「スーパー林道」に続く〜