野遊の12月 10「ツアー登山体験談」(5)頂上

頂上直下は狭い細い岩の道で、ガイドが「ストックはしまってください」と呼ばわり、そこで(みなさんしまうのにも時間がかかり)また手間取った。

ひょい、ひょい、と行ける道ながら、野遊の前の高齢的おじさんは、「ストックがなくては歩けない」とつぶやき、何度も立ち往生していた。僭越ながら野遊は「そこの岩に足をかけて」とか、指示をし、それでもおじさんが動かないときは、先に行って足場を指示したりした。ガイドは先頭と殿で、途中までは目が届かず、真中あたりの顧客たちはヤッサモッサしていたのだ。

その高齢的おじさんは足元が震え、なかなか定まらず、「来なければよかった」と、何度も言った。しょうがないでしょうよ、もう来てしまっているのだから^_^;

「大丈夫、ここに足を乗せて。そうです、次ぎはここ」と、なんだか野遊は一生懸命応援した。高齢的おじさん、来なくてもよいものを、ほかの楽しみ方もありましょうものを、山に登ろうと思って参加したのだ。それは最高の選択と思う野遊、応援せずにいられるものか。おじさんは必死な感じで野遊のスタンスを踏んでくだされた。

で、ようやく頂上に立ったのだが、高齢的おじさん、野遊には一瞥もくれずに景色を眺めていた。「あんたなぞしらん」という感じ。お、そういうことでしたねと野遊も離れた。

頂上は狭かった。もう少し先があり、そこに行きたいと思ったが、最初に立った隊長ガイドが、「ここで終わりです、ここで待っていてください」と言いながら、後から来る一連隊を見守っているので、野遊は勝手な行動を控え、行きたい気持を押さえ、ふもとからあがってくる牛の鳴き声みたいなブルトーザーの音を聞いていた。

・・・でも、あそこまで行けるんじゃないだろうか・・・岩の上を伝って行けば。