野遊の12月 11「ツアー登山体験談」(6)実力ランダム

じっと稜線伝いの岩の連なりを見ていた野遊、ガイドの「では、後続の方が登ってきますので、頂上が狭いので交代します」の声に、しぶしぶ引き返す。

ふと見ると、あの高齢的おじさんが立ち止まっていて、また野遊の前を歩くことになった。それで野遊は、またおじさんを誘導しながらそこを退却することになった。ストックがないと歩けないとかで、野遊がおじさんのストックを持ち、必要なときに手渡した。

といっても、それはほんのわずかな箇所なのだった。おじさんは足をブルブルさせながら相当時間をかけ、チラとおじさんのお顔を見たが、やはりかなり高齢と思われる男性であった。だから野遊はこの御仁を、首に着くまではしっかりサポート申しあげようと思ったものだ。こういう人も、参加できるツアーなのだ。

こういう人は、こういうツアーでなければ山に行けないのかもしれず、その意味ではツアーっていうのも、いいことかもしれない。でもこのツアーの場合、あんまりにも実力がランダムで、だから高齢専門のツアーがあればいいかもしれないが、かといって、年齢何歳以上と定めてしまえば、こういうおじさんは参加しないかもしれないし、複雑な心境。

首まで降りて、また長らく後列隊の往復を待った。野遊はコートを羽織ったり脱いだりしていた。寒いけど、動けば温かいので。

降りるとき気がついたのだが、バスの座席で野遊の隣にいたご婦人は後列隊だった。岩を登るときなど、野遊は後列隊は見ていないので知らないが、しっかり歩いていたと思う。ほかにも(もちろん野遊より)しっかりした顧客はいたと思う。

頂上の首を過ごしてさらに行くと、ひとり、行く手からソロ登山者(男性)がやってきた。そこは小さな登り返しの道で、我々はたまたまゆるい登りにあったが、人数が多いので、先頭ガイドが道をあけ、我々はソロ登山者を通した。ソロさんは黙って足早に通り過ぎて行った。

やがて頂上が見渡せる道に出て、休憩。ソロさんは俊足で、もう頂上に立っていて、立ち止まらずに先端まで歩いて行く。「あれ、あそこまで行けるのか」と、顧客、口々につぶやきながら見あげていた。

野遊も「行きたかったなぁ〜」と思ったものだ。でも集団行動だからね。