朝日連峰北方 6、2012年9月10日(月)出発

準備体操をしてしばらくブラブラしてから歩きはじめた。すぐに歩きはじめた昨夏とはすべて違うやり方をしてゲンを担いでいるような気分。

しばらく行くと出合吹沢だ。ここで朝食をとる。橋本荘の女将さんが作ってくれたおにぎり3個の、1個をゆっくり食べる。それから名古屋の山友達が「いいぞ〜!」と紹介してくれた「夢の口どけブドウ糖」の飴を食べ(これってただのお砂糖の塊だと思うけど^_^;)、お茶を飲んで歩き出す。

今回はカメラを持ってきた。いつもはこんな(重さの上での)贅沢品は除外してきたが、障子は自分の手で撮って残したいと思った。野遊の写真力はまあ普通のデジカメを扱う程度の「ドヘタ」なのだが。

出合吹沢を渡って向こうに行き、そこから水なし登山が始まるのだ。

普通の登山道だ。ゆるゆると登っていく。1時間も登ったころ、ああ、ここで後ろから人がやってきたのだったと思い出す。それがブルーベリー氏だ。あとで知ったが西川山岳会の人だった。彼は野遊を追い越してからずっと一緒に歩いてくれた。ブルーベリーの木を教えてくれて、手のひらに摘み取って食べさせてくれた。だからブルーベリー氏だ。

女性の一人が珍しかったらしく、あれこれ聞かれながら登り、朝食を摂らずに歩いていた野遊は苦しくなってきて、何度も先に行ってくださいと言ったものだが。野遊が悪い意味で優柔不断だった…

どのくらい一緒に登ったかなあ、ここかな、ここかなと思いつつ登ったが、なかなかそれらしいところに出なくて、野遊はかなり長い間ブルーベリー氏と歩いたことを思い知った。

やがて急登の岩っぽいところに出て、ロープが張られてあり、彼がスイスイと登りながら野遊が登るのを上から見ていた場所に出た。ああここだ、と思いながら登ると、野遊はロープを使わないで登っているのだった。あのときは「そこにつかまって」とか指示を受けながらモタモタして登った。人間の心理の不思議だ。それとすでに疲労していたのだろう。

とうとうブルーベリー氏に「朝食にしたいのでどうか先に行って」と断固お願いした場所に出た。彼は「もう少し行くと、いい場所があるから」と言い、行かなかった。今思えば、それは紫ナデだ。紫ナデの手前まで、野遊は飲まず食わずで歩いたのだった。

そしてブルーベリー氏の親切を強くふり切り、先に行ってもらって、さあ、と山道に座ろうとした野遊は、腰からドサッと座ってしまい、ひろげたおにぎりは喉を通らなくなっていた。ほかのものを食べようとしてもまるで受けつけず、ポカリスウェットを飲んで飴を口に入れて登り始めたのだったが、そんな感じで登るのでは、そのときに引き返せばよかったのにという意見も後に聞いたが、野遊は少しずつ体調を取り戻す気でいたのだった。

だって自分の小さな失敗(朝起きたときのこと、朝食を摂り損ねたこと)で調子よくないだけで、即下山はできなかったのだ。ずっと以前から思ってきて、ようやく遠いところからやってきた場合、こういう失態を演じるのはよくあるこというが、野遊もおバカだな!順路の通りに失敗の道を歩み出していたのだ。今年、この道を踏みながら、あの折りの自分の姿を何度も何度も反芻した。
(写真は出合吹沢。浅い川が流れている。登りは向こう側に渡って行く。朝のお弁当を広げている)

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