朝日連峰北方 7、紫ナデ

ロープの張ってある所から、左手に障子ヶ岳を眺めながらしばらく尾根伝いに行くと、ヒョイ、といった感じで紫ナデに着いた。思わず標識に抱きついてしまった。一人で感激して、涙がホタホタ溢れてしまった。
10時過ぎだった。昨年はここに着くまでが長かった!出発時間は今回より早いのに、午後になっていた。何をしていたのだろう。紫ナデの手前の稜線を行ったり来たりしていたような気がする。まっすぐ行けばすぐナデだったというのに!
食べられなくて、いつになく水を飲んで、たちまちなくなってしまったのだった。シャリバテというけれど、まさにそれで、ガソリンのない車が動くわけがないのに歩いたのだった。ムリに固形物を口にすると吐き気がして、飴を口に入れていたが、その飴は口中にくっついたまま溶けなかったものだ。
普段から知り過ぎるほど知っている原理を忘れていたのではない。頭の中でそれがグルグル回りながらも、対処する気になれなかったとでも言おうか、ボウリングでひとたびレーンに乗ってしまったボールをどうにもできないという感じ。
こんな初歩的なミスを犯していることに気づきながらも気づいていない。
あのとき野遊はこの紫ナデから障子を見あげ、「障子さん、どうか野遊が無事に天狗の小屋に着けますように」と祈ったのだった。

それらをじっくり思い出し、なぞりながら障子を見つめた。ここでおにぎりをまた1個、食べてしばらくのんびりしていた。
(写真は紫ナデへの登山道。目の前の急登をよじ登る)
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