朝日連峰北方 13 角力尾根

朝は7時に出発した。人気がないし、熊がいたら怖いので早朝の行動は控えた。今日は狐穴までなのでゆっくりゆとりをもって行ける。

出発してから20分ほど、天狗に登って坑道のように真ん中が堀削られてある下りにさしかかるとき、野遊は忘れ物に気づいた。ストックだ。

それまでは緩やかな道だったのでスタコラ歩いてしまい、この下りでようやく手にストックがないことに気づいたのだった。どうもストックが習慣になっていないので、なしで歩いても気づかないのだろう。

どうしようか・・・なんて本気で考えてしまった。置いてきちゃおうか、ということ。また来年来るし、そのとき持ち帰ればいいか、とか。でもこの山行は楽日の以東の下りは急降下と聞く。どんな感じなのか野遊は体験していないので不安だ。

引き返すことにした。ザックを置いてトコトコ。さんざんお別れの挨拶をして出てきた天狗小屋に、照れくさい気がした。ストックは出入り口にかかっている。昨日入ってきたときに、そこに掛けたままだ。

ストックを持ち、もう一度石畳の道を登る。もうこの道を何回通ったかって、行き帰り合わせるとこれで10回目になってしまう(^_^;)

8:00発だな。これはきっと山神が、この時間のほうがいいよと示唆したものかもしれないな。そこらに熊がいたのかもね。それとも、この先野遊が、取り返しに行けないようなストックの忘れ方をするのを警告したのかもしれない。

天狗のあたりは、道は穏やかな様相を呈しているのだが、尾根に入ると顔つきが違ってくる。深い森をどこまでも行くと、次第に岩山になっていくのだ。

本には「長大なる尾根」と書かれてある。それは大井沢から稜線(三方境)までのことをいうのだろう。道は整備されてあるし途中天狗の小屋があるので、長大といっても1泊して登れば問題ない。

同じく長大なる尾根と呼ばれているのは奥三面から北寒江山への道、ミキ尾根だ。こちらは整備が雑で、小屋は三面小屋と道陸神峰にあるにはあるが、どうも中途半端な位置で、大上戸にテントする登山者もある。開けていないという意味では、こちらのほうが身を以って「長大なる尾根」と呼べる。身を以ってなんて言っている野遊、歩いていないけど(>_<)

歩きたいなあ歩けない。道に迷ってしまいそうで。今回はその入り口、相模山まで足を延ばそうと思っている。これは明日の「お楽しみ」だ。

昨秋は曇っていて景色があまり見えなかったが、今日は晴れた空に、遠く大朝日岳が聳えているのが見える。ふり返ると竜ヶ岳が、長い台形をした姿で見送ってくれている。あれは大井沢からの登りの方面だ、今どこら辺に野遊がいるか、あれが一つの目安になる。