朝日連峰北方 20 ☆相模山☆

ryo-rya2012-10-24

先ほど見あげた最も手前の突起に近づいた稜線で、ザックを降ろした。行動食を少々食べ、水を飲んでから、ポケットにキャンデーを1個とコピーして折りたたんだ地図を入れて空身で歩きだす。

どんどん登っていく。すると上からまた細い道になっていてしばらく横にボコボコ岩を歩いて、また登り。これって道か。というような、わけのわからない個所をメチャクチャ手足で登り、とにかく一段落したら考えようと登り切ると、その先に道が続いている。

先ほど見た突起は、ただの通過点のようなもので、いつの間にか過ぎてしまった。もういいのではないかなあと思うのだがサミットらしい感じがない。でもこれ以上行ったら大上戸への稜線に入ってしまう。

左が谷側で、右はクマザサの山肌になっている。周辺のクマザサをストックで分けて目印を探した。そしたら四角い石造りの立派な三角点が出てきた。そのそばに新しい赤い布があった。「2012年 田代」と書かれてある。きっと田代さんが三面から登ってきて、ここに記していったのだろう。

大上戸への道はゆるい吊り状になっていて、優しそうな顔をしていた。行きたい衝動と恐怖感にかられながらしばし眺めた。

「御相模山様」に一礼して戻る。先ほどの「わけのわからない道」も、知ってしまえばわずかな距離で何ということもなく下れた。やがて下方にMyザックを見い出し、救命ボートを見つけた気持で進んでいった。

不思議と、あのイヤ〜な臭いの漂ってきた場所を歩いても、今度はなにも臭ってこなかったので、やっぱりあれは動物の遺骸臭ではなく、生きた動物さんだったのではないかと思う。

山にいる熊はおだやかだそうだ。麓に降りてくる熊はストレスを抱えていて、危険度が高くなるそうだ。

善六池は、先ほどと違った風景になっていた。陽の当たり方で全然違う。お昼までに戻ろうと思っていたけれど、11時を過ぎている。狐穴を、遅くとも13時には出なければ。急ごう。

はるか上方に、北寒江、寒江山が並んで見える。きれいな稜線だ。下方は、覗き込めば白く一筋の川が流れている。それらを広く覆っているのは緑だ。草の緑はなんでこんなに優しいのだろう。細長い草がすべてを覆うようにふっくらと広がっていて、揺れる一葉一葉はレースのカーテンのように、その薄い生地の裏側から太陽が透けている。

そのとき、下からかすかな風があがってきた。それは何とも言えず芳しかった。高山植物の匂いは、草いきれなどでムワッとむせ返るようなことがあるが、雪渓と草々を撫でて昇ってくる風は、さわやかで温和だ。こんないい香りは一生忘れないと思った。

上空から見たら、野遊はどんなにちっぽけな点だろう。
朝日連峰の真ん中で愛を叫ぶ」というような心境、この深い山の懐に抱かれて、野遊は溶けて消えてしまいたい!

ポツンと突っ立って見える北寒江山の道標は、三面から来た登山者には励みに思えることだろう。ゆっくりとした登り道、三方池、そして稜線に出た。

・・・あ〜、もう、う〜む、きれいな世界だったなぁ・・・