裏剱(13)二手に分かれて出発

ガイド「Kさんは行きたいんですか、池の平」
(ちょっと意地悪な聴き方だよね、ガイド自身はどうよ)
K氏「行きたい」
野遊は思わず笑ってしまった。そうかK氏は行きたいのだ、こんなにお天気のいい日、きれいな池の平に。
ガイドも「オプションだから」なんて言っていたけれど、行きたいのだ。黙っていたHさんも、行きたいからなのだ。

仕事で来ているだけなら、ヒュッテ直行のほうが楽なのだ。でも苦労しても、本当は行きたいのだ。山の好きな、みんな仲間なのだ。そのことがすごくうれしかった。

分岐点で、ヒュッテ直行希望者が名乗りをあげた。結局スタッフは彼らに付き添わず、この先ヒュッテまでは整備された木道なので、自分たちで気をつけて行きなさいということになった。彼らは自由を得たような笑顔で、かばい合いながらヒュッテへの道を歩いて行った。