裏剱(14)秘境、池の平

さてザックを置いて、軽い身となって池の平を目指す。用意周到な人はサブザックを持ってきている。野遊はスポーツドリンクを飲み、ポケットにキャンデーを入れ、空身で出発。往復100分ほど。

池の平の小屋まで30分、チョコチョコ、みんな早足でガイドについていく。誰かが遅れても、ガイドはどんどん行く。後尾には2名の添乗員がいる。

小屋に着くと、すぐに池の平に降りて行った。降り口に小さなお地蔵さんがいて、野遊はしゃがみこんで「お地蔵さん、お願いね」と手を合わせた。何のお願いなのやら・・・
そこで待っている人が、また何人か出た。今の速度がきつかった人たちだ。有志はガイドについて降りて行った。
池の平は美しい楽園だった。丸く縁取られた池には竜の髭のような細長い緑の葉が無数に浮かび、同じ方向にたなびいている。ふっさりとした草々に囲まれた池の縁のプロムナードは、険しげな剱の岩峰の、お鉢の底にそっと秘められた、甘い夢物語のようにたよやかだ。
ガスが湧く。ところどころを白く消してゆく。

御池めぐりをして元の位置に戻り、登り返して小屋に着くと、待っていた人たちが迎えてくれた。またお地蔵さんにご挨拶して、100円で柄杓に一杯、お水を飲んだ。

池の平小屋は、大正時代は鉱山としての作業基地だった。
今は登山者に愛されている。小屋は平成3年に倒壊し、平成5年(1993年)、新築された。お風呂もある。
かの映画『剱・点の記』の撮影現場にもなっている。

小休止した後、今来た道を30分ほどせっせと仙人峠に戻り、そこから今日のお宿、仙人池ヒュッテに向かった。