裏剱(17)仙人池の夜と朝

夕食は、ここもまた今の山小屋風というのだろうか、何でもあった。旅館の普通の食事的だ。富山の名物という、イカ墨の塩辛があった。富山は食べ物の名物がたくさんある。

トイレの臭いが小屋中に漂っていて苦痛を感じた。トイレスペースの仕切り戸はない。廊下から直にトイレだ。

部屋に引き上げてからも、臭気は濃く立ち込めた。就寝しようと身を横たえると、野遊のすぐ頭上の戸口から漂ってくるし、トイレに立つ人が、この戸を開けるたびに「うっ」と息を詰めるほど新たに濃く立ち込める。・・・苦痛だ。

振動、音、光にも悩まされた。野遊の頭上でトイレに行く人が、部屋のガタガタの戸を開け閉めすると、振動と音でビクッとしてしまう。中には、その足元で寝ている野遊を見おろす人もいて、もろに顔にライトが当たる。本人は、顔を向ける先にライトがいくので、そこに照らし出されるものが「物」でなくて生き物の場合、相手にどういう影響を与えるか、何も考えないのだろうかと不思議だ。

ああ〜こんな中で眠れない。食事なんか惣菜一品でいい、缶詰だけだっていい。この臭い山小屋と、山でのマナーも思いやりも学んでいないド素人のトイレ往来者たち、何とかならんか。