裏剱(20)剱をふり返りつつ

【3日目】10月10日(火)晴れ
阿曽原に向かう。
ヒュッテからの道はしばらく木道で、すぐに岩道を下り始める。剱の景観とお別れだ。ありがとう、さようなら、さようなら。

野遊は感傷的なタイプなのだろうか。入山以来、ずっと見あげてきた剱を後方にして、どんどん進みながらも振り向いてしまい、何度もさようならとつぶやいてしまう。皆さんいさぎがいいというか、この山行一筋で、だれもふり向かない。

歩いて行くほどに景色はまた展開し、新たな景観が現れる。すると野遊も、さっきの感傷はどこへやら、わあすばらしいとそっちに心を奪われて夢中になる。結局同じことか(^^;)

初冠雪前の山は、1年で雪の最も少ない季節なのだが、溶け切らない雪が、日陰の平べったい登山道などに凍ってこびりついていて滑りやすいところもあり、慎重に行った。今我々は山懐に抱かれて歩いている。