裏剱(24)持参の食料の話

ところで野遊は空腹だった。持参してきた行動食はソイジョイや玄米ブラン、ドライフルーツとキャンディ類だ。
仙人池ヒュッテのお昼のお弁当の、特大トロロ巻おにぎりが1個残っているので、あまり気は進まないがそれを少し食べよう、ゴミになっちゃうしと思って取り出し、外のくつろぎスペースに座った。そこでは先ほど到着した女性2人連れが、お湯を沸かしてカップラーメンを食べようとしていた。
話しかけられて仲良しになり、野遊はおにぎりを3分の1にして、彼女たちに分けてあげた。彼女たちは熱いラーメンと一緒に、冷たくなったおにぎりを食べて喜んでくれた。
お礼に紅茶はいかがですかと言われたが、二人用のコッヘルに、一つのティーバックが慎ましく沈んでいる紅茶を、どうしていただけるものか。夕食時にお茶を飲みますのでと謹んでご遠慮申しあげた。野遊は明日、おにぎりの生ゴミを持ち歩かずに済んだのだ。そうは言わなかったけどね ( ´艸`)

そういえば初日、ツアー参加者の男性が休憩時にミカンを食べていて、そばにいた野遊に1個、どうぞと差し出してくれた。野遊、欲しそうな顔していたのかな。そのときも野遊はお礼を述べてご遠慮申しあげている。彼は自力でそれを持参してきたのだし、これから登山が始まるのだから、ミカン丸々1個をありがとうといただくわけにはいかないのだ。
代わりの物をあげられればいいが。

ところがその次の日、今度は女性の参加者が、野遊にパンをちぎって「どうぞ」してくれた。野遊は要らなかった。でも彼女は「残ったら持ち歩かなくては」と言い、仕方なく受け取ってしまった。そしたら一緒に、ミカンを3粒「どうぞ」してくれた。これはありがたくいただいた。(パンのほうはついにザックの片隅で眠ったまま下山した)

日帰りなどで余裕があるときは、野遊もいろいろ持って行って仲間に配ったりするのだが、今回は分けられるようなものは何もない。