裏剱(26)話し合う 1

夕食前に添乗員Hさんが女性部屋で、明日は1名(怪我婦人)、添乗員K氏と二人で1時間早く出発すると告げた。
それは欅平トロッコ列車の時間が決まっているので、全員間に合うように配慮された結果とのことで、了解した。

その折、どちらからともなく、ガイドについて云々の課題が出て話し合った。出るべくして出た課題という感がする。
登山は危険を伴うものなので、時としてガイドがどんな厳しい態度をとっても、皆さんそれは了解しているのだが、たびたび発される嫌味な表現を、前方にいればもろに聞くので、鬱している人もいたのだ。

「自分もいつ何を言われるかと思うと、ストレスでした」という言葉には、野遊もうなづくものがあった。
「山の名前を聞かれたら、あんなに叱るように理屈を言わないで、とりあえず答えくれればいいのにと。どっちにしてもわたしたち、どうしても聞きたいわけでもなく、何気なく聞くだけで、教えてもらったところで大して覚えちゃいないし」
という言葉には、全員から笑い声があがった。発言したご本人も笑っていた。

みなさんガイドより社会的には大人だから、ただ批判するのとは違って、ガイドの立場も認め、それぞれ十分なる配慮の上での意見、要望だったと思う。