裏剱(27)話し合う 2

その折、ツアー客のレベルが落ちていることが話題にあがったが、顧客に罪はない。顧客のレベルを落としているのはツアー会社なのだ。レベルを上げたければ即、実行できる。厳選すればいい。

けれど皆さんがどんどん成長して、個人山行を始めるようになったなら、ツアー会社はやっていけなくなるし、生意気な顧客も増えてやりにくくなるだろう。

常に連れて行ってもらうことしか考えない顧客を望むと同時に、もっとレベルアップした顧客を望むとしたなら、それは矛盾している。手前勝手な注文というものだ。

多分ツアー会社側は、そこの原理を重々承知している。その上で、このたびのガイドは、添乗員K氏に、いささかひんしゅくを買っているようだが、それは、毎日新聞旅行のK氏としては、無事に登山が成功して、顧客に喜んでもらえることを第一の目標としているので、顧客の登山者としての今後の成長を期待するわけではないのだから、レベル5だからこのくらいできなければならないと叱ったり、この速度が嫌なら帰りなさいとか、そんなきつい言葉を顧客たちに、ガイドの口から言ってほしくないという気持があったのではないだろうか。
毎日新聞旅行が集めた顧客であって、ガイドが集めた生徒ではないのだ。