温泉から温泉山行 13 警備隊1号

ryo-rya2013-09-11

その地点(突起の下部)に、一人のおじいさんがいた。
さっき、突起の上にぽつんと立っていた人影があったが、この人だ。
痩せていて、白いあごひげを蓄えた何とも風情のあるおじいさんだ。
体にいろんなものを装着している。警備隊員だそうだ。
人のいない山奥で、何をしておられるのだろう・・・(@_@;)

「こちら1号、雪倉はどうですか」とかトランシーバーに言っていた。

追いついてきたさっきのおじさんが1号氏に「旭岳の頂上はあれですか」と、突起を指して尋ねると、
「そうです。以前は『旭岳』と標識が立っていましたが、今はありませんので、行ってもただの岩です」と。

おじさんは岩に張りついてしばらく逡巡していた。狭い空間で身動きがとりにくい。
野遊は行きたくてしょうがないので、おじさんが早くどいてくれればいいのにと待っていた。
ゴスケ「僕はここでいい」
野遊「じゃあ行ってくる」
これを聞くとおじさんは前進を始めた。
で、野遊もその後についた。

岩はしっかりしていて、しっくりなじんだ。
靴がかかるくらいのバンドが走っていて、渡っていくと上方にスタンスがあり、3点確保で登ると頂上に出た。
おじさんとヤッホーをした。弱虫野遊は膝をまっすぐに伸ばせなかった。おじさんは這いつくばったままだった。

やがておじさんが降り、待ってから野遊が降りた。バンドに足が届かなくてちょっとブルブルした。
下部に立つと、1号氏が「下りのほうが怖いでしょう」と言った。

足元に紫の花が咲いている。
「岩桔梗」と野遊が言うと、
1号氏が「そう、それは岩桔梗。こちらのが千島桔梗です。千島桔梗は、花の内側に白い毛が生えていますよ、見てごらんなさい」と。
その言い方もなんだかすてきだった。

1号氏にお礼を述べ、元来た道を戻る。途中一度、岩の合間から1号氏の姿が見えたので、思い切り手をふると、1号氏も手をふって下さった。
そのあと姿勢を正して、丁寧にお辞儀をして下さった。
たった一人であんなところに残って、さびしくないのかなあ。

それから3人で、登って来た道を下るのはザレザレ過ぎて大変だからと、少し右寄りの斜面を下ったけれど、これまた下りにくい「道でない道」だった。

ようやく麓について、それから雪渓を歩いて、白馬のほうに登って行った。
稜線分岐から旭岳に登って白馬分岐に着くまで2時間かかった。
村営山荘分岐1時10分、白馬山荘着15時30分。