十勝岳 10 負けてます関東人

ホテルのロビーで、添乗員K氏がホテルマンに、「負けてますね」と言われていた。
昨日大阪から来たツアーと比べて、今回のツアー客たちは「負けてる」のだそうだ。

大阪ツアー客方は、ロビーに入ってきた途端、それこそ枯れ木にパッと花が咲き乱れたようなにぎやかさだったそうだが、我々は静かすぎるのだそうだ。何がおもしろくてわざわざ遊びに来たのだという感じにおとなしくて、昨日の騒がしさの後だけに、心配したくなるほどだとか話し合っていたのを聞き、そばにいた参加者たちも笑ってしまった。それは朝のバスでのことを思い出したから。

朝のバスで、我々は運転手さんに何度かハッパをかけられた。
運転手さんが、運転しながらマイクで街の名物を紹介したり冗談を言ったりして我々をもてなしてくれているのに、我々はそれを関心を持って聞いてはいるのだが、いちいち声をあげて反応しないので、おもしろくなかったのだろう。
運転手さんも先日の大阪ツアーと比べていた。

「皆さん00は好きですか」というような問いかけにも、「はい」という返事が小さく返ってくる程度で、「聞いたらすぐにはっきり返事をしてくださいね!」と、ちょっと不機嫌そう。
野遊はだから結構意識して「はーい」と返事するように心がけたし、ほかの座席からも協力的に声があがるようになったけれど、大阪のツアーは多分、運転手さんの一声一声に素早く反応して「はい」だけでなく、あれこれと言葉が返ってきたり、どっと笑いがあがったりしたのだろう。

K氏が「山に登りに来たツアーなので、山の説明をしてくれれば喜ぶと思います」と運転手さんに言葉を添えていた。その通り。車窓から次々と眺められる山の説明をその都度されたら得にうれしい。でもそうしてもらったとしても、我々は大きな歓声をあげたり、言葉を飛び交わせて騒いだりはしなかっただろうと思う。民族性の相違なのだからしょうがない。

美瑛の街はパッチワーク・ストリートいう名所があって、広い大きな四角い畑が、見渡す限りびっしりつながっていて、同じ作物を隣り合せて植えていない特徴を持ち、だから色が四角ごとに違うのだ。そして畑の真中がこんもりと盛りあがっているので、パッチワークのようなのだ。

シーズンをはずしているので残念だったが、それでもすごくきれいで車窓越しに見入ってしまった。これが作物シーズンだったら、どんなにきれいだろう。もちろん「ワァ〜きれい」と歓声をあげたのだが、なんだか運転手さんに聞こえるように言わなければという意識が働き過ぎてぎこちなくなってしまう。

それに、今から登山する野遊は、緊張してもいた。観光気分で街を眺めて騒ぐ気分には到底なれなかった。ほかの参加者方もそうだったと思う。

「これを見て感激しないなら、もう美瑛に来なくていい!」と、運転手さんは怒ってしまった。みんな一生懸命褒めたつもりなんだけどね・・・負けてますね関東人(^_^;)