北アのゲートキーパー焼岳 6 卜伝の湯

以前の中の湯温泉は、あの薄気味悪い真っ暗な釜トンネルの手前にあって、露天に入っている人たちがバスの我々に手を振ったり、登山者は今度あの温泉に立ち寄ってみたいものだと思うような、何とも言えぬ印象的な温泉だったのだが、野遊は相次ぐ上高地方面の登山を重ねたにもかかわらずその機会を得ず、数年前プー子と涸沢に行った帰りに初めて寄ったときは、すでに場所が移動されていた。
大きな地震があって、中の湯温泉はこの林道のずっと上方に移動し、かの露天風呂は山腹にその跡を記念する看板のようなものが残っているだけだ。

釜トンネルも改装され、距離を長くして傾斜を緩和し、明かりをつけてきれいになった。天井版落盤事故以来、ここも張り板をはがしたのでちょっと暗いイメージに戻ってはいるが。

釜トンネルの横にある卜伝の湯は、当時は中の湯温泉と同時に楽しめたのだが、今は位置が離れてしまってそうもいかない。頼めば送迎バスで送り迎えしてくれることもあるそうだが、それは混んでいない日だろう。

釜トンネル横の売店で中の湯温泉に連絡を入れてもらって送迎バスを待つのだが、このたびは団体さんがあって1台見送る羽目になった。ただでさえ予定を遅れているのに・・・でも今日登山するのではないので、待つことに特別の支障はなかった。

プー子と二人で来たときはものすごく愛想が良くて、なにかと親切だった売店のおじさんだったが、今日はいかにも無愛想で不機嫌だった。混雑していて忙しいのだろう。

50分ほど待たされて送迎バスに乗り込み、乗車中は運転手さん(中の湯温泉のスタッフ)から、焼岳登山の情報をできるだけ聞きながら乗車タイムを有効にした。

中の湯温泉に到着。この玄関口から見あげる穂高の素晴らしさはどうだろう!明神を真正面に据えて斜め後方に、肩をそびやかすようなタッチで穂高連峰が連なる。あらま、これだけでも充分得した感じだ。