ヒマラヤ山行(24) 薬の話Ⅱ「胃腸薬」

トレッキング4日目あたりから、腸の具合がメチャメチャ状態になって、ミヤリサンがどんなに大事か知ったけれど、そのあと胃も具合悪くなって、腸内環境を正常にする薬だけでは賄えなくなり、ふうふう言っている野遊に、胃薬をくれた人。同じツアーの仲間とは言え、各自の責任に於いて持参してくるべき薬を、そう簡単に手渡すことができるものだろうか。

重量の問題ではない。日本からのトランクも、カトマンドゥからのダッフルバックも、一人当たり何キロまでと規制がある中、各自これをと選んで入れてくるのだ。それを、持ってこなかったクライアントが、そんな簡単にもらっていいものだろうか。
みんなこのトレッキング期間、自分の裁量で持参してきた物を使いながら過ごすのだ。だから「これがあったらよかったのに!」というものを持ってきていないのは当然失敗なのだ。そういう場合は原則として、不自由を甘受すべきなのだ。

たくさん持ってきたからいいよ。と、その人は言った。

野遊はとっとと2包飲んでしまって、もっとあげようかと言ってくれるその人の言葉をそのまま受け止めて、さらに2包、服用した。2日で4包。ちょっといただいちゃいましたの量ではない。けれどお蔭様で、何とも言えない胃の気持悪さが消えたのだ。

もっとも、その日から山行は後半にさしかかり、高度をぐんぐん下げ始めたので、体調が回復したのはその影響もあるだろう。でもあの胃薬を飲まなかったなら、野遊はあと1日は確実に苦しんだと思う。このことは忘れてはならないと思う。

それと精神的にも、あの胃薬服用は、どれほどの安堵感につながったか知れない。このことも忘れまいと思う。
自己管理不行き届きで他者に援けてもらったのだけど、不思議とそのことが、ほっとしたやすらぎにつながった。一人だけど一人じゃないんだなあと。

胃薬クライアントには深く深く感謝している。

野遊はこれを教訓として、これから1日以上の山行のときは、必ず胃薬を持参しようと心に誓った。銘柄も覚えた。(これでなくてもいいのだろうけど野遊はゲンをかついで一生これにする)