Sureshの夏 21 前進

ある日、野遊の二番目の姉が我が家に来て、シュレスに日本語を教えた。これでシュレスの日本語の先生はゴスケ、野遊、姉と3人になる。教え方はそれぞれなのだが、英語の教師だったこの姉は、人にものを教えるのが好きで、シュレスがその気になれば、いくらでも教えてあげるといった意気込みだった。

野遊はこの間に仕事で出かけたが、帰ってくると二人はテーブルに向かって、ずっと勉強していたようで、みっちりとシュレスはしごかれたようだ。

それからも姉は車でやってきて、シュレスに日本語を教えた。姉がいるときは勉強の時間なので、次の食事の時間まで、シュレスもちゃんとテーブルに向き合って学んだ。シュレスは姉が持ってきたカードの、表に日本語、裏にネパール語で意味と読み方(発音)を書いて覚える方法が気に入ったようで、後々も自分が作成したカードを持ち歩くようになった。

いやいやでもあちこちから学ぶうちに、日本語が少しわかってきて、我々の日常会話にも興味を持つようになり、音だけ拾ってメモしたりしだした。こうなればスムーズだ。シュレスは若い頭でどんどん言葉を吸収していった。元々賢い子だしね。

シュレスは、ネパールではトレッキングが一番いい仕事だと言う。自分はトレッキングの仕事が好きだと。自分にフィットしていると。

トレッキングは、様々な国のカスタマーたちをヒマラヤにガイドする仕事で、日常の世話もするし、ロッジが混んでいればシェルパたちは粗末な場所に固まって寝なければならない。わがままな客もいるだろう。
収入は日にいくらと考えればかなりいいのだが、トレッキングシーズンだけの仕事となり、たいていはほかに仕事が得られず、雨季はは無収入だ。
それがネパールで一番いい仕事だというシュレスの想いの中に、ヒマラヤをガイドできるのは我々ネパール人だという自負心が感じられた。シュレス、いいガイドになってね、そうすればあなたの好きなトレッキングで、1年を支えられるような仕事ができると思うわ。日本語が話せれば、良い武器になる!さあ、時間を惜しんで勉強しましょ。