鎌倉駅前の交差点物語  (5)電動車いすで渡ってみる

千一(無所属無党派・全くの個人としての市議会議員・一匹狼ならぬ一匹コヤギさん)のめざしていることは、鎌倉市の福祉行政についてだ。

鎌倉市の中央図書館にエレベーターをつけて、車椅子でも利用できるようにしたり、江ノ電の駅をひとつ、ひとつとバリアフリー化していったり、鎌倉市にも、どのような認知症の方をも受け入れ可能な「ショートステイ」的なものを作ってほしい、と訴えたり、災害時の要介護者に対する介護人の確保について訴えている。

鎌倉駅、その周辺はみごとにバリアフリー化された。お陰で駅周辺は、ベビーバギーと共に、お母さん方の姿も目立つようになった。

千一は市内中を電動車いすを操縦しながら、自力で走りまわり、歩きにくい道を点検している。地球が丸いのは、神様が、端っこ、隅っこに住む人間をなくすためだよ、という言葉があるが、街は丸くないから、いわゆる辺鄙(へんりん)めいた扱いを受けている場所もあり、そこに住む人々は不便な思いをしているだろう。中央の観光地ばかり整備されても、それでは市民に公平でないのだ。

最初は道行く人にじろじろ見られた。千一は言う。「じろじろ見てよ」。千一も、以前はじろじろ見られるのが嫌だったそうだ。今は越えている。「障害のある人も、こもっていないでどんどん外出して」という思いだ。それには、もっともっと道を歩きやすくしなくてはと、頑張っているのだ。(そのハンディキャップ精神を乗り越えるのは、並たいていの年月、努力ではない)

千一は、早速鎌倉駅前のスクランブル交差点を何度も渡って、その時間を味わった。彼の電動車いすは速度が出るので、彼自身はこの時間内で困ることはないのだが、まわりを見ながら、やはり、通行時間が短すぎると思うに至る。