鎌倉駅前の交差点物語 (7)議会で質問する

議会当日、千一は自分の番が来るのをじっと待っている。まぶたは長くはあけていられないし、首も長くはもたげていられないから、最前列に座っていながら、目を閉じてうつむくので、まるで居眠りをしているように見える。後ろから見る彼の様子は、彼を知らない人には大変不謹慎に見えるだろう。

以前、その改善策として、頭を支える枕を、車椅子に設置したのだが、やはり千一は前方に体を曲げていってしまう。

でも会議の内容はちゃんと聞いていて、自分の番になると頭をもたげる。

千一の質問文は、職員が読みあげる。何項目かあるが、一気にとっとと読み上げてしまう。それに対する答えも、一気に終わってしまう。なぜなら両方一方的に話すだけだからだ。

本来ならここが議員の正念場で、答えを受けたらそれに対して即、どう突っ込み、どう攻めるかなのだが、千一は言葉の応酬ができないから、それぞれ一方的に語るしかないのだ。ただし、それでは議員一人に与えられた時間のわずかしかこなしていないので、再質問を読みあげる時間は与えられている。

今の市の答えに対しての再質問は、千一がその場でキーボードを打ち、職員が書き取るしかないのだが、時間がかかるので、休憩をそこに持って行くようにされてある。全員各派の部屋に引き上げて休み、千一は議会室に残って、職員に再質問を書き取ってもらうのだ。