鎌倉駅前の交差点物語(25)カッコウとピヨピヨ

神奈川県警の方の講演で心に残ったことがある。
目の不自由な方も含めて、音で知らせる交差点に、歴史があること。
昔は赤青黄色の点滅を頼りに歩行者は渡っていた。
いつからか、それが鳴り物入りになった。
音楽が流れるところも多い。
で、そろそろ終わりですよ〜と言うときに、音楽が早くなったり、ピーポパーポとかになる。あれはなんだか機械が壊れて同じ所を回っているとかいう感じがして、信号が白目むいて苦しみだすみたいで、生理的に野遊はどうも好きになれない。
でも、長い間そうだったので、仕方ないから慣れていった。

そのことについてこれらを研究している県警の方々が、「みんなが知っている音楽を流したらどうか。歩行者が音楽の終わりのほうで、ああもうそろそろだなってわかるのではないか」と話し合ったという。
でも外人だったらどうするのという意見もあり。いい策とも言えないそうだ。

で、やっぱりせっつくようなピーポパーポになっている。そういう経過があるのだった。

それから、どちらから鳴っているのかわかるように、道路の両方から音を出す交差点も工夫されてきたそうだ。野遊は気づかなかったが、後日、鎌倉駅前のスクランブル交差点を渡りながら、このことを思い出したものだ。今渡った後方から「カッコウカッコウ」と流れてきていた。そしてこれから渡る前方から、「ピヨ、ピヨ」と流れていた。それもよく聞こえてしかも耳に優しかった。

わたしたちはそういう環境で、いとも当たり前に過ごしているが、今日のようになった経過を知ってみると、ありがたいものだと思う。渡る人のだれが、そのありがたみに気づいているだろうか。知る機会もないし。

知るってすてきなことだ。渡りながら、カッコウとか耳にしながら、ああ、快適だな、渡りやすいな、工夫されているなと思えるのだから。これからあの交差点を、だれかと一緒に渡るときは、野遊はこのことを話してあげようと思った。