鎌倉駅前の交差点物語(26)学徒の研究

休憩時間をはさんで後半のシンポジウムが、1割ほど参加者を減らして始まった。

第2部は調査報告。

毎年のことながら、神奈川大学の人間工学研究室の学徒2名が、卒論の課題で取り上げた研究発表だ。毎月1回の鎌倉バリアフリー研究会でも、彼らは途中発表を繰り返し、研究会の大先輩がたに厳しいチェックや注文を受けながら仕上げていったもの。それは机上の研究ではなく、実際に体を使って実地調査を重ねた研究でもある。

鎌倉名物江ノ電バリアフリー化は年々進んでいるが、まだまだ余地があり、市民には興味深い内容だ。江ノ電は観光客の方々に喜ばれているが、別に観光電車ではない。市民の必需品なのだ。野遊も高校時代3年間通学に利用していた。でも市民より市外の彼らのほうが江ノ電に詳しいのでないか。毎日利用している市民にこそ、聴いてほしいものだ。

この研究は地面のバリアフリーだけでなく、多目的トイレの設置場所、機能性、また道路の標識など視覚的な面からも調査されていて、この街を、こんなふうに研究してくれる学徒がいるということに、心打たれる。

彼らを指導された堀野先生が、2部のまとめ。快適な街づくりは行政、学者、会社の三者一体だけでなく、そこに「人間」を入れてこそ、と、人間工学の原理をいかにもわかりやすく語られた。時間が押していることを主催者側として頭に叩き込んだ上で、重要なことを平易にかいつまんで語りながら、チョコチョコ寄り道しては会場に笑いを起こしていた。

堀野先生は5年前の千一春祭りにはじめて講演され、以来このシンポジウムを促進されてきた。最初の講演(ミニトーク)は、『鎌倉のユニバーサルデザイン』というタイトルだった。当時は、野遊はこのタイトルを聞いて、「別にデザインしてくれなくてもいいんだけど」と思ったものだ。人間工学によって造られた椅子ですとかいって販売されているイトーキの椅子が、使いやすくなかったことがあり、そんな専門用語、なによと思ったこともあり。無知でした<(_ _)>

バリアフリー研究会の方々と接し、この5年間で、野遊は知らないうちにずいぶん学んだなぁと実感する。知らないうちにってとこがすごいな。なんにも勉強していないのに、風みたいに浸透してくるものは、千一を取り巻くバリアフリー研究会の方々の「思い」だろうか。