バリアフリーを考える(5)毎日新聞記者さんとの対談 1

雨模様の午後、毎日新聞の記者さんの取材訪問を受けた。

約束の時間は13時30分。記者さんは東京からいらっしゃるので、場所の説明などをあらかじめしておく。

野遊が13時15分ころ行くと、記者さんは、もういらしていた。

野遊はちょっと驚いて、千一の様子をすばやく見た。千一はワイシャツを着ていた。着替えの時間があったのだな。それでなんとなくほっとした。

千一は、昼は12時から1時間、ヘルパーさんに手伝ってもらって、昼食を摂り、出かけるときや訪問を受けるときは着替えるのだが、たいていギリギリになってしまう。ヘルパーさんがたは良心的で、13時を少し過ぎてもやり残し作業があればやていってくださる。というか千一が時間ギリギリになっても、あれやって、これしていってと要求するからなんだけど。とにかく千一はこの時間を目いっぱい有効に使いたいのだ。

野遊にもそうだ。作業を終えて帰るとき、それから、と、用事が出てくる。なら時間内に言ってよ、と、急いでいるときなど思う。一人になると急に不自由になるから、今の内に思いつくことをしてもらおうという気持が、無意識の内に働くのかもしれない。慢性的に不安なのかもしれない。

だからヘルパーさんがいる時間内に記者さんが到着していたことに、千さん、することできたかなと、野遊は気になったのだった。(あとで聞いたら、食後のトイレタイムに到着されたそうだ^_^;)

ヘルパーさんはキッチンでまだ後片づけをしていて、こんなに時間オーバーしているのに、本当にありがたいと思った。

記者さんは素敵な感じの女性だった。彼女は千一の直角右側の椅子に座っていた。テーブルは正方形で、直角左側はごちゃごちゃ物が置いてあるし、野遊はそうなると千一の向かい側に座るしかない。

「困ったな」と思った。「向かい側に座っていただきたかったな」と。でも、記者さんは先にいらしてそこに座られたのだから、今から場所を指示するのがはばかられた。

さて取材が始まると、足元の音声キーボードを打ちながら千一は、何度も瞼が下がってきて、そのたびに野遊は立ち上がって、ごちゃごちゃ物が置いてある左側を通って千一の瞼を拭き、座ってはまた立ち上がることとなった。騒がしいね(>_<)

野遊が右側の椅子に座ったなら、せっかくの話し合い、こんなに立ったり座ったり、騒がしくしないですんだのにね。記者さんは目が開かなくなる千一をじっと見つめるし、千一は意識すると益々目があかなくなるし、野遊がタオルを手に、彼の横に立ったままというのもまた騒がしいし、だんだん申し訳ない気分になっていった。

このような事情は、初めての方にはわかるはずもなく、千一はまことに不自由なんだなと改めて思う。

そしたら記者さんが「ご不自由を感じませんか?」と質問した。
そしたら千一が「比べたことないからわかりません」と答えていた。
この千一の言葉、野遊は特マルつきで好きなんだよね〜