大黒屋光大夫を辿る旅 19 赤い矢・レッドアロー号

8月8日の夜は、レッドアロー号に乗車する予定。その前の長々しい時間、わけのわからない奇妙な辺鄙なところで、いつになったら電車が来るのか乗れるのか、ずっと待たされた。

もう野遊は、体がなまってしょうがない。よく皆さんおとなしく、どこかの柵のヘリとかに腰かけたりしてじっと待っていられるものだと感心する。気持悪くならないのかなあ。精神鍛錬ができているのかもしれない。

野遊はこれ以上静かに座っていられない。体がギシギシしている感じ。ぞろ〜ぞろ〜とゆっくり移動してはシ〜ン、静々おしゃべり。野遊は甲斐性なしなのかもしれないけれど、もうたまらず、柔軟体操して、その場でランニングしてしまった。あっちまで走りたいけれど、3分後に集合がかかるか1時間後に集合がかかるかわからない状態なので、もうその場で運動するしかない。

今日はこれから寝台車で一夜を明かすのだから、今しか運動できないのだ。出発してから全く今日までほんっと運動していないので疲れがたまる!

23時55分、ゴロゴロとトランクを引きずりながらようやく乗車。
簡易ベッド上下の4人部屋で、添乗員のKさんが野遊の上だった。野遊の向かいのベッドがちょっと仲良くなりかけのサッちゃんで、彼女は肩が凝った〜と言っていたので、寝る前にふたりでストレッチをやった。野遊を見ながらサッちゃんは自分でやる形。

足先を特に丹念に、そして下半身から上半身に向けて伸ばしたりねじったり。野遊は日ごろストレッチ講習会の指導もやっているので、要点をまとめてざっと40分くらいやってから寝た。そのとき、上段のKさんは、何やら忙しそうに遅くまで室外にいたが、部屋に入ってくるなり、すぐに寝てしまった。

さすがにプロだ。と思った。

さて寝る時間。窓の外は暗くて何も見えない。でもだんだん明けてきた。朝焼けがきれい。寝台車なんて高校時代の修学旅行と、はたちのころ叔父と、親戚の結婚式に出るために大阪に行ったときくらいなものだ。夜行登山は寝台車ではないから。

それで明るくなったら朝食とかでパックされたパンやらチーズやらハムやらがきた。予定ではこのままホテルに行き、小休止して朝食とか。何でこんなに食べてばかりいるのだろう。その朝食パック、野遊は手をつけなかった。サッちゃんも。・・・食すほどに疲れるだろう。