大黒屋光大夫を辿る旅 26 トイレ隊長

8月10日
見学でも食事でも、トイレをいつ済ますか、これが問題だ。清潔なトイレばかりではないし、数が少なかったりも。朝ホテルを出るときは、もちろん皆さんトイレを済ませて出発する。野遊は、自分はトイレで困ることはないだろうと思っていた。

ところが!エカチェリーナ宮殿に朝一番で向かうバスの中で、なななんと、バスが出たばかりだというのに、野遊はトイレに行きたくなった。それは、毎日の食事が重くて、朝食を抜いた朝だった。でもコーヒーを二杯飲んだのだ。確かにコーヒーは利尿剤になるのだが、夜寝る前には(カフェインがあるから)飲まないが、ほかの時間帯は気にしない。しまった。

早くどこでもいいから、バス、着かないかな〜。だんだん我慢しづらくなってくる。ア〜受験の最中にこんなだったら辛いだろうな〜。やっとバスが宮殿の近くの道路に止まり、降りるときハンカチを下に落とした。かがんで取ろうとしたら、うっ。これはきついわ。

宮殿への道は、両側小さなお店がひしめいている。ガイドのアリスのすぐ後ろについて、小走りしたい衝動をこらえる。宮殿の門に到着。早く早く早く〜中に入ろうよ。

けれど手続きがあるそうで、アリスがどこかに行ってしまった。添乗員のkさんは、外が意外と寒いので、バスに戻ってコートを取りにいく方々について戻っていった。10分、20分、待てど暮らせどどちらも戻ってこない。待っている仲間たちはお行儀がよくて、なごやかに話をしている。時々笑いが起こる。一緒に笑いたいけどダメ〜。
今こそ腹筋を鍛えるときだとばかりにこらえていた(失礼m(__)m)

どのくらい待ったって? たっぷり30分以上だ。kさんがたが戻ってきて、それからようやくアリスが戻ってきて、チケットを受け取って入館。黙っていればいいものを、野遊はアリスに「まずはトイレ」と言ってしまった恥ずかしいけど。そしたら皆さんの半分くらいが口々に「私も」と言い、「それではん、先にん、トイレにん、いきましょん」と、アリスは「ん」をつけて言った。
「てんしんがいますん」と、バスの中でのアリスの説明、これは「(屋根の上には)天使がいます」だ。

それで半数以上がトイレに行く組となった。団長が「トイレ隊長はどなたですか」と言うので(こういうところが団長のユーモラスな面だ)、「はい」と野遊は返事をした。隊長ならきっと一番乗りにしてくれるのではと思ったのだ。それでアリスと野遊が先頭になって戸外のトイレに「隊員を連れて行った」。トイレは男女分かれて女子は三基ほどあった。こんなにすばらしい宮殿のトイレにしては、一昔前の日本の、国立大学あたりの野外トイレのごとくであった。ロシアンのトイレへの意識ってなんなの?

野遊はトイレを済ませて、隊長なので出入り口でしばらく待ち、2人出てきたので、三基なのでこれで終わりと思い、収容してアリスのところに戻り、「これで全部です」と言った。すると、中からひとり出てきた。「あら、ひとり見落としましたね」と、友が笑った。すると、またひとり中から出てきた。出入り口が向こう側にもあるのだろうか謎だ。男子トイレからも出てきた。あ、男性もいたんだった。
・・・それで野遊はトイレ隊長をクビになった(;_;)