ネコたち日誌(15)8月13日(木) 第14日目 夏日

ピーカンの真夏日から多少脱出して、今朝は雨が降った。ストレッチ講習会で、生徒さんがたに、お湿りがあって少しホッとしましたねと言うとみなさん笑顔で深くうなづかれたが、午後になるとまた陽が強く射しだした。この中を帰るのは、真冬の道より恐いと、高齢の方が言っておられた。たしかに。遭難しそう。

すぐに30度を超すが、野遊が子供時代は28度を超したら真夏で、プールに行く許可が親から降りたものだが、30度というのは相当異常だった。今はそうでもないのが怖いことだ。

いい子にしてるのよと言って出てきたが、帰るとネコたちはゴスケ周りでくつろいでいて、ルネだけ野遊の部屋にいた。そのルネが低く唸ると奈々子が登ってきている。ジロスケと梅太は登ってきてもルネを挑発せず、たがいに場所を占めて関わらないでいる。特に梅太はルネなんか無視している。一瞥もくれずにルネのわきを通るが、ルネは緊張するけど唸らない。それ以上接近したり挑発してこなければルネは静かだ。

まあほかのネコたちを無視して堂々とふるまう梅太はふてぶてしく憎々しげではある。梅太は人間の愛の施しを屁とも思わず、拒絶さえしないほど無用と思っている。梅太は愛情の泉に浸って育ち、思春期にそれを取りあげられた。もうないのだと意識するに至るまで、どれほどの苦悩に悶えたことか。胃が飛び出しそうに悔しく惨めだったに違いない。梅太はだから、人間から注がれるものを「信じないネコ」になっている。今から何をしても無駄。

梅太は自力で自分なりの居住まい方を探り当て、それに徹してきた。梅太はそこで快適に過ごせればいいのだ。そういう意味では、今、梅太は快適に過ごしていると野遊は思う。

ジロスケは最近は野遊の部屋の戸を自分で開けて出入りするが、梅太は相変わらず「ウ”ニャ」と鳴いて、座って待っているので、野遊は戸を開けに行くのだ。野遊も相変わらず「いらっしゃいませいらっしゃいませどうぞお入りくださいまし」と言う。すると「なんだその言い方は。入場料でも取る気か」という顔をして、「本当は嫌なんだが」とつけ添えるそぶりをして入ってくる。抱こうとすると右に左にとかわし、鈍いはずの梅太が結構運動神経いいじゃないですか。「好きにさせてくれりゃそれでいいんだよ!」と梅太が言った。