縁猫(11)そういう時まで生きようね

野遊の手の中で死なせるわけにはいかないので、がんばろうと思う。
もしダメになったら、野遊が振り返って、仕方なかったのだと思えるように養育しよう。でないと、野遊はまたしても、猫のことで苦しみを増やしていくことになる。もう重くて猫のことで悲しみたくない。

結局野遊は自分を傷つけたくなくて、それでがんばっているのだろう。だったらもう安楽死なんて言ってはいけない。もしあのとき、医者が「そうですか」と野遊を肯定して、安楽死させたとしたら、野遊はこれまた地獄の苦しみだっただろう。
(野遊は、医者が、野遊がそう発言する前に、「もう動けないので安楽死しかないです」と言ってくれるのを望んだことは事実だ。言ってくれないのに、安楽死を押して頼む気はなかった。つまり野遊は逃げているのだ)

10%か何だか知らないけど。わずかな中にも絶体絶命ではないものがあるのだから、とにかく救命に向けて努力していこう。ダメになるなら、だめになるその時まで、この子を生かそう。よし、もう揺るがないぞ。


排尿は食事前に刺激するとチュチュっと出してくれるのだが、排便は反応しない。食後に促しても、あまり反応がなくなってきた。それでいて食事中などに、チョコのようにドロッと形なく、間断なく少しずつ出てくるようになってきた。よくない傾向だなあ。

口から噴くし、下からも排出するし、どれも、小さな体で、ものすごい存在感だ。この臭気。もういちいち悲鳴をあげないように、新聞紙を大きく何枚も敷いて、その上で給餌開始。

粉ミルクはスプーン1杯分、お湯で溶いてトロリ状態、練缶詰めA/Dスプーン1杯、お湯。猫と共にぐっしょりな感じで1時間奮闘する食タイム。そのあとは全部着替えて雑巾がけ。それでも部屋が臭う。猫もクサイ。も〜まいった…んん、でも揺るがないぞ。

ああまた給餌タイムが始まる。排泄もさせねば。途中で躍起とならないように、自分で自分にしっかりと言い聞かせ。