縁猫(10)10%の中で戦っている

「あと1週間、がんばってみてください」と動物病院の先生は言った。

それは野遊にとっては、「あと1週間は、普段の生活に戻らないで、時間と労力を、この子のために捧げてください」という意味に等しい。

あと1週間で、何がどうなるのだ。
あと1週間で、結論が出るのだろうか。この子は立ち直るのか。死ぬならあと1週間で見極められるという意味か。てことは、ここ1週間が山場ですという意味か。

努力の果てに死んでく猫をじっと見つめていかなければならないのか。またしても、一生忘れられない悲しみを、野遊は残りそれほど多くもない人生に、増やしてしまうのか。もう、そういうことに耐える体力はない。嫌だ、とても嫌だ。

「先生この子は、生きる可能性はありますか」と、野遊はもう一度聞いた。
「10%は」と、先生は答えた。やっぱり嫌だ!ほとんど助からないってことではないか。野遊に、その苦しみを振らないでほしい。

それに先生はきっと多めに言っている。生きる可能性は、ないとは言わない。というほどの意味だくらいは、野遊にもわかります!!

生きなくともがんばってくれていれば、介助のしようもあるが、猫はガンガン拒絶して、死に一直線という感じなのに、なんで人間が、その子を苦しめてまで、強制給餌をするの!?

野遊の揺れる心に、先生の声が聞こえた。
「10%の中で、この子は戦っています」