富山 9 埋没林博物館と魚津水族館

埋没林博物館・・・名前が印象的。
2000年も昔の、原生林の大樹を掘り起こし、水に漬けて保存した館があった。どうやってここまで保存したか、その過程が詳しく記されてあった。底からは気泡が出ていて、水は常に少しずつ流れているのだった。木の根はとても大きく、もう生きてはいないはずなのに、うねうねとしなやかに多方向に延びていた。この根は上から覗けたし、横から水槽を見ることもできた。ぐるりと一周して眺めるので時間がかかった。それほど大きな木の根だった。この木の根が、埋没林博物館の主役なのだろう。

映像館では今日は見ることのできない魚津の海岸の蜃気楼を見せてくれた。蜃気楼は何種類かあって、逆さに見えたり、上下に見えたりするのだった。こちらの土手が海の向こうに岸壁のように浮きたち、走る船が大きな岸壁沿いに行くように見えても、実は普通の海上を走っているのだった。説明つきの各種蜃気楼を堪能できた。

光るホタルイカについてのナレーションも、わかりやすく臨場感があった。富山のお国柄は地味で研究熱心、誠実な濃い心、という感じがした。

博物館を出ると、すっかり時間が経っていた。水族館のほうに行くバスが出た後だった。あまり本数もないし、では歩いて行こう。けれど雨模様になってきた。傘をさす。

魚津の海岸道路に沿って歩いていくと、風が強まってきた。景色はほぼ見えなかったが、時々曇天の向こうに北アルプスのシルエットが認められ、海と山に挟まれたこの美しい道路を歩くのはすてきだった。

途中、「米騒動」の跡地という公園があった。ここにも丁寧な説明があり、富山の人の、この国にあった出来事を大切にして、人々に語り継いでいこうとする真摯な心構えが感じられた。

そのうち風が強くなり、傘をさせなくなり、霧雨に濡れながら帽子を抑えて歩いた。向かい風と戦うようにして40分ほど歩くと、ようやく水族館に着いた。向かいの遊園地の観覧車は止まっていた。観覧車から山を眺めたかった。

さて水族館。野遊はいろいろ見ているが、日本海側の水族館は初めてだ。珍しい魚介類が盛りだくさんで、触ってもいいコーナーもあり、え、魚をどうやって触るのかなと見ると、貝だった。でも、そうっと丁寧に触ってくださいねと書いてあった。

あまりに珍しい爬虫類の展示が続くと、野遊はもう、突然それらが目に飛び込んでくるので防備できず、そのたびに全身を電流が走り、冷や汗をかき、体もこわばってきた。それで、もう見ることを続けられなくなった。

江ノ島水族館のように「イルカショー」とか、呼び込みも派手な明るいイメージではなく、ひたすら研究の魚津水族館、といったイメージを抱いた。

外に出ると雨はそれほどでもなかったが風が強く、魚津駅までタクシーで戻った。
運転手さん「博物館から水族館を徒歩で行くとはね。それもこの天気に」
昨日はいいお天気で北アルプスが素晴らしかったと言ったら、運転手さんは、あれくらいの景色は大したことではない。本当に今日はきれいだ!と思える日は年に一度か二度しかない。という内容のことを言った。富山気質かな。自国に誇りを持ってるな〜。

そして魚津駅に着き、ランチタイムの前に帰りの切符を購入しておこうと思ったら、強風のため富山駅行の電車は動いていないとのこと。黒部宇奈月温泉駅まで戻ってから新幹線に乗車するという手段もあるが、それだとまた「はくたか」になる。帰りは「かがやき」に乗るつもりだったのに…。