富山 4 黒部宇奈月温泉駅

なんだろこの長々しい名称は。北陸新幹線はくたか」の停車駅として、新しく作られた駅「黒部宇奈月温泉」。新幹線の駅名以外にも「黒部」「宇奈月」「宇奈月温泉」など、似たような駅名があって、どれがどれだかわかりにくいことといったら!呼び込みたいものをただくっつけた感じ。駅周辺には温泉なんてないし。

この「黒部宇奈月温泉駅」で下車すると、金太郎温泉さんが送迎バスで迎えに来てくれることになっている。

12時18分に到着した。チェックインは15時からなので、迎えてもらう時間をそれに合わせ、それまで周辺を散策したいと思っていた。その具体的情報が、ネットで調べたところはよくわからなかったが、駅の前に観光案内所があり、そこで何でも聞けるそうなので、まず入ってみた。

1、どこかでランチをしたいけれど、どういうところがありますか?

2、2時間ほど散策したいのですが、手ごろな近場を紹介してください。

この2点。ところが、新しそうなこの案内所のスタッフ方は、実はまだ慣れていないのかもしれないが、何も答えてくれない。男女とも、「食事?それは…」と言いよどみ、あとはニヤニヤしながら、「食事するとこなんかここにはないですねぇ」。

散策については、さらに答えてくれない。ちょっと何か(観光地でも)想像してくれているのか目を泳がせるが、やがてまたニヤニヤ。

煮え切らないのでこちらから「では、散策できそうな観光地は、この近辺にはないのですね?」と聞くと、はじめて明確に「はい」と答えてくれた。そう言われてしまった観光客の気持ちたるや…

新幹線でお弁当を買うこともできたが、ゆっくり食べるには乗車時間が短いと思うし、駅に降り立てば何かはあるだろうと思っていた。


宇奈月駅で有名らしい黒ラーメンというのを食べてみたかったのだが、それはトロッコ電車の始発駅の宇奈月なので、場所が違う。ここより奥まったところにある宇奈月駅がそのくらいなら、新幹線の黒部宇奈月温泉駅もそうなのだろうと思ってしまったのだ。

宇奈月駅に出たことは二度ある。数年前、剱沢〜仙人池〜阿曽原〜欅平からトロッコ電車。一昨年、白馬〜祖母谷〜欅平からトロッコ電車。終点の宇奈月駅に出たとき、黒部の奥にある駅なのに、色々なお店があってにぎやかだった。

それらを通過してそのまま富山電鉄の宇奈月温泉駅まで歩いて乗車、魚津で下車、それから北陸本線で越後湯沢まで行って、そこから上越新幹線に乗って、トンネルまみれで帰ってきたものだ。こう思い出すとなかなか遠かったな。はや懐かしい。

それにしてもこまったな〜・・・お腹すいたし、こんな早い時間に送迎バスを呼ぶのも悪いし。それに直で金太郎温泉に行くのでは、あんまり工夫がない。

どうしようかと思いながら、観光案内所のガラス張りから駅前の風景を眺めていると、広いロータリー風の向こうに、駅前蕎麦屋みたいな感じのお店が見えた。あれって食事処かしら?そばでニヤついて黙っているスタッフに聞くと、「はい、あそこで何か簡単に食べることはできます」と答えてくれた。「ここらには食べ物屋はあそこしかないです」と。さっきは、「食べるお店などここにはないです」と言ったけれど、こういうのならあるということか。

なんか、こんなところにきて食事なんて、無知ですよといった感じがあり、スタッフはそれを笑っているのだが、別に悪気はなく、あのニヤつきは、もしかしたら、いや、おそらく、紹介しようもないので、むしろ困惑していたのかもしれない。

ゴスケは「出来立ての駅に勤務して、職員も知らなかったんだよ」と言っていた。

ではロータリーに沿ってあのお店に行こう。ゴスケが「タクシーでどこかもう少し店のあるところに連れてってもらおうか?」と言ったが、どこまで行けばそういう場所があるのか見当もつかないので「ま、いいか」と、その、取ってつけたような駅前食堂に歩いて行った。