富山 6 散策の道

北陸新幹線の新しい駅、黒部宇奈月温泉駅
駅前の観光案内の人に、どこも行くところはないですと言い切られ、金太郎温泉の送迎車を待つ2時間を、どう過ごそうか…。道路づたいになんとなく歩いていく。街並みもまた、生活臭があっていいものだ。という感じではない。それも自然環境の広がりでもなく、何と表現したらいいのだろう、何もない…個人の家も見当たらない、新しく作られた道。

川がある。川は、奇妙に文化的に両端を切り取られて一定の幅を保っている。こんなふうに、両端をコンクリートで固められて、秩序正しく(?)流れる水は、すでに川ではない。ドブでさえもない。整形手術された「ただの水の道」だ。でもこの水は、北アルプスの山に吹き、当たって、落ちて、あらゆる水分の源として河をなし、その子々孫々がこうして街にたどりついて流れているのだ。

野遊は目の前の丘を見ていたが、ゴスケは、この川に向かって、尽きせぬ思いがあるようで、何度も何やら語りかけていた。もちろん野遊にではなく川に。

長宝寺というお寺に出くわし、入らずに通り過ぎようとしたら、どこかから一人の女性が出てきて、見ていってくださいと連呼。拝観料(?)が何々と連呼。申し訳ないが、予備知識もなく特に興味がわかず、通り過ぎた。その後ろから、声だけが、「せめて150円でもいいから、拝観料を置いて行ってください!!!」。別に貧しいわけでもないでしょうに。なんだろわけわかんない・・・名所にしたいのかな?

田んぼが広がっていて、これから植えるようだ。田んぼの道の真正面に山があり、その斜面に「黒部の名水」と書かれた大看板が、こちら向きにかかっていた。道なりに、山というか丘に向かった。20分ほど歩いていくと日蔭側の登りに差しかかり、ゆるゆると登って行った。

ゴスケがゼンマイを見つけて摘んだ。そのうちタラの芽や蕗が見つかって、ゴスケに教わりながら摘んだ。山菜が生えているのに、だれもいない。どこに行く道かなあ。やがて「黒部の名水」看板に着いてしまった。また道が続いているので登って行った。

頂上に着いた。そこはきれいに整備されてあって、人々が遊んでいた。鎌倉では散りはじめの桜が、ここでは三分咲きで、手入れよく並んでいた。お年寄りが日向ぼっこをしていたり、お母さんが幼児を連れていたり。地元の自然遊園地のようだと感じたが、そこは宮野運動公園という名の公園だった。左手に舗装された広い車道があり、大きく迂回しながら駅に続いている。

帰り道でも山菜を摘んだ。土筆もいっぱい。

黒部宇奈月温泉から、1キロもないほどの距離なので、先ほどの長宝寺経由で、この公園までをプロムナードにしたら、この駅に立った人たちも、温泉への送迎バスを待つために立ち寄るだけでなく、ここでもゆっくり観光気分を味わえるはずだと思った。何しろ北アの後立山先端の山々が大きくどーんとそびえている駅なのだから。