山岳映画上映会(6)今井道子さん

18時30分の開始時間が近づくと満席になった。野遊の知っている人はいなかったが、どこかにはいるかもしれない。野遊のいくつか前の席に座った女性が、もしかしたら今井道子さんではないかと思う。この山岳映画会のメンバーなのかな。てことはこの会は、やはり登山者たちの会なのか。観客の皆さん、かなりの年配の方々ばかりだ。30年以上前の、あの熱気ある登山界で活躍してらした方も交じっておられるのだろう。
現に今井道子さんもそうだし。彼女は医師として活躍しておられるが、シャチと呼ばれた当時、女性が男性と肩を並べて同じ岩壁に挑む困難さはいかほどだったことかと思う。

今井道子さんは賢くて器量よしで、一流のロッククライマーでもある。彼女の文章は、当時の山岳書しか知らないが、好きだ。人に対してもし、押しが強く高慢なところのある人だったとしても、文章には本質が現れるもので、彼女の心が、自然の前で、まっすぐで純粋だと感じたことがあり、以来野遊はこの人のきれいな魂が好きになった。(今、どんなにエラ〜イ医師かどうかは知らないままだ。携わっていないので、野遊の感想の中では、一応無関係)

今井道子さんは、加藤保男さんとは仲良しだったようで、やっちゃんと呼んでいる。さんざんそういう呼びかけを読み、野遊もつい、彼をやっちゃんと言ってしまうようになった。

今井道子さんは保男さんのお兄さんの多喜男さんと付き合っていた時期があると聞いたことがあるが、聞いただけなので断言できません。恋人同士だったと聞いたことがあるが、聞いただけで断言できません。どうしてこんなくだらない?スキャンダラス?なことをわざわざここに書くかというと、野遊にはちっともスキャンダラスには感じられなくて、初めてそういう噂を知ったのは、やっちゃんがなくなって、今井道子さんが「やっちゃん、あなたが本当は世界初の無酸素登頂だったのよね」と書いたころだ。野遊にはなんか目の前に、もう一つの美しい、不思議な世界が広がったのだ。

弟のような加藤保男を追悼する優しい心。ヒマラヤ遠征時、やっちゃんが小食のシャチ姉の隣に座って、若い胃袋で一人前半以上を食べた話とか。エディケーションの高いシャチ姉にしてみれば、暇な時間は寝転んで漫画本ばかり読んでいるやっちゃんはどう見えたのかなあ。でも次第に彼の実力を認めるようになっていくのね。その時シャチ姉は、多喜男さんと付き合っていたのかなぁ〜!?いや、もうちょっとあとかも。でも登山のトップクラスの者同士、どんな風に好感度が高かったのかな。何とも言えない感慨が。今でも疼く。登山界のドラマだなぁ!

やがて今井道子さんは、ダンプさんと気が合ったのね。ジョラスのウェディングは世界最高だわ♪ なので高橋道子さんです。うん、ダンプさんのほうが包容力ありそう。なんて勝手なこと書いてすみません(^-^;

ちなみにスイスの登山ガイドを務めていた加藤多喜男さんは、ただ今ヘルニアを患っているそう。昔からボッカ並みの重い荷を背負って登山していたし。その娘さんが近々、渡日する。写真で拝見しただけだけど、これまたかわいくて美人。

今井道子さん。帰りに声をかけてみようかしら。忘れなかったらね。
田部井淳子さんも素晴らしい。日本女性の登山家の中では今井道子さんと田部井淳子さんが、それぞれの道を歩まれる断トツトップの方々です。
時がさかのぼっていく。70,80年代の山の世界へ。開演のベル。


書き足し・先ほどのニュースで、田部井淳子さんの訃報を知りました。何も知らぬまま、上記「田部井淳子さんも素晴らしい云々」と書いた野遊でした。病を抱えながら、その最期まで山を愛し、人々に登山の喜びを伝えようとされた田部井淳子さんに、心より敬意と哀悼の意を表します。黙禱。